「もう限界、引っ越します」

 2022年12月、そんな言葉が大きく打たれた動画がYouTubeで公開された。東京から四国の限界集落へ移り住んだ男性が、絶えない住民トラブル、持病の悪化、被災による住居の水没によって他の地域に引っ越すことになった経緯を伝えた動画は、350万回超も再生されて話題に。

 投稿したのは、YouTubeチャンネル『小さな村で暮らす』を運営する柳生明良氏(34)。そんな彼に、限界集落への移住を決めたきっかけや収支などを含めた東京と田舎の違い、移住後に起きた子供たちの変化、田舎ならではのストレスなどについて、話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む

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柳生さん一家 現在住んでいる高知県大川村で撮影したもの 写真=本人提供

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「これはえらいことになるな」と思った

――「もう限界、引っ越します」と宣言した動画がバズりにバズって柳生さん一家が注目されたわけですが、やはり反響は凄まじかったですか?

柳生明良(以下、柳生) まずは、コメントがすごかったです。10秒に1個コメントが来る感じでした。再生回数もそれまでは2万か3万だったのが、一気に10万、次の日には50万になって、そこから100万、200万と。

「これはえらいことになるな」と思ってたら、今度はTwitterでバズったり、ネットニュースにもなって。

――どのようなコメントが。

柳生 7割ぐらいが「大変でしたね」や「がんばれ」的なコメントで、2割が「自分も同じような目に遭いました」という気持ちを分かち合えそうな方々からのコメントで、残り1割が「自業自得だろ。お前がきちんと調べて移住しなかったからだろ」みたいな。

 意外とアンチ的なコメントが少なかったのには驚きましたね。「がんばれ」的な声が比較的多かったので、まだYouTubeを続けられるなと安心感を得たところはありました。

移住を決意する大きなきっかけは新型コロナウイルス

――柳生さんは2021年にご家族で四国の限界集落へ移住されましたが、以前から地方移住を考えていたのですか。

柳生 いま34歳ですが、結婚前から考えていました。東京で小学校の教員をしていたんですけど、満員電車に揺られて通勤するのが辛かったし、教育の現場が自分のやりたかった仕事とは違った形になっていくのを目の当たりにして。仕事の問題が田舎暮らしに直結するわけではないですけど、現実を変えたいきっかけになったのは間違いないです。

――漠然とした思いを抱えていたなか、移住を決意する大きなきっかけやタイミングとなったのは何だったのでしょうか。

柳生 新型コロナウイルスですね。特に2020年の4月から6月がつらくて。自粛でずっと家の中に箱詰めになって、公園に行っても子どもが遊べないように遊具がテープでグルグル巻きにされていたり、子どもと外にいると近所の人に白い目で見られたりするのに息苦しさを感じたんです。

 いつ通常に戻るかわからないし、こういう状況下ならば、ずっとあこがれていた田舎暮らしにチャレンジしてみようと。

 YouTubeで地域おこし協力隊の制度を知って、協力隊としてお給料を3年間いただきながら、その間に移住後もちゃんと生計を立てられるように基盤を築ければいいなと思って。2021年の3月に教師を辞めて、6月から移住に向けて動きました。