「もう限界、引っ越します」
2022年12月、そんな言葉が大きく打たれた動画がYouTubeで公開された。東京から四国の限界集落へ移り住んだ男性が、絶えない住民トラブル、持病の悪化、被災による住居の水没によって他の地域に引っ越すことになった経緯を伝えた動画は、350万回超も再生されて話題に。
投稿したのは、YouTubeチャンネル「小さな村で暮らす」を運営する柳生明良氏(34)。そんな彼に、破ってはならない田舎のルールや地元団体とのトラブル、再移住先での生活などについて、話を聞いた。(全2回の2回目/最初から読む)
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田舎特有の暗黙の了解
――2021年11月に四国の限界集落に移住するも、“あらぬ噂”を流されたりして2022年4月に「きついな」と感じたとのことですが、これはパートナーも同じように感じていたのですか。
柳生 夫婦間で意見は一致していました。それでも自然に恵まれていましたし、自分たちでそういう環境を望んで移住してきたわけですから。そこはとどまる要因にはなっていましたね。
――田舎特有の破ってはいけないルールや暗黙の了解みたいなものはありましたか。
柳生 ありましたね。そういうものなんだなと思いましたけど、ものをもらったら必ずものを返すとか、遊びにいく時は手ぶらでは行かないとか。そういうルールは教えてもらいました。で、実際にそれをやるとよい形で関係性を維持できていましたから。
なにかいただいたり、なにかお手伝いしていただいたら、東京のちょっと高級なお菓子を取り寄せてお返ししました。そこは感謝の意ですから当然ですけどね。
これは挨拶の話になりますけど、引越した時も東京のお菓子を渡しました。20人分くらい用意して、ちょっと力のある方、お世話になるだろうなという方のお宅に直接うかがって渡しました。礼儀正しくしていると、いろいろよくしていただけるので。
高齢化が進んだ集落
――逆に柳生さんのほうでも、他の住民の方が困っていたら駆けつけたりしましたか。
柳生 台風が直撃したことがあって、土砂災害に遭った民家とかには一番に飛んでいって、片付けとかを率先してやってました。
――動画を拝見すると、お手伝いしてくれる方は年配者が多いような気がしました。
柳生 住民の60%が60歳以上で、メインになっているのが70代、80代の方々で。かなり高齢化が進んだ集落ではありました。30代、40代は、ほぼいなくて、その年代の方々は市街地のほうに移ってしまっていて。
――高齢化が進んでいても、住民のみなさんはお元気なのでしょうか。
柳生 山を歩いて生活してますから、もう足腰が違うんです。60代じゃまだ若い、70代はまだまだ労働力、80歳になっても畑仕事をやっているという感じで。
みなさん、食に関しては畑や猟で自給自足されていて。作った野菜を売ったりもしていました。あと、地域内に市内の子どもたちを山村留学させる寮とか働き口も何ヶ所かあったので、そういったところで働いている方もいました。