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コロナ禍で増加した地方移住…地元住民の頭を悩ませている“モンスター新住民”の実態に迫る

『田舎暮らし毒本』より #2

2021/10/12
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 リモートワークの普及に伴って関心が高まった都市部から地方への移住。小説家の樋口明雄氏が暮らす北杜市も、コロナ禍以来、移住者が増加しているという。はたして都市から地方へ移り住む人たちは地域に馴染んで生活できているのだろうか。

 ここでは、樋口氏の著書『田舎暮らし毒本』の一部を抜粋。新住民と地元住民との間に起こりがちなトラブルの実態に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)

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困った移住者たち

 ここ北杜市は、コロナ禍以来、確実に移住者が増えた。

 新しく家が建ったり、借家が埋まったり。

 東京から2時間という距離のため、双方でデュアルライフを楽しむ者もいる。

 最近の移住者の特徴は、極力、地元に溶け込まず、孤立して生活している人が増えた──市役所の担当や不動産業の関係者は、そんなことを私にいった。

 その土地に光回線が来ているかとか、とにかくインフラが重視される。もちろんリモートワークのためである。

 仕事の場として、新しい土地にやってくるわけだ。

©iStock.com

 そういう人たちの中には、都会の流儀を田舎に持ち込んでくるタイプが多い。かつての都市部における自分たちの生活様式を、確固たる常識だと思っている。それに見合わないからと拒絶したり、反発したりする。

 引っ越してきても、隣近所に挨拶もしなかったり、地元の人たちとすれ違っても、目も合わせない新住民が多いそうだ。

 一方で損得勘定だけは異常に発達していて、ただなものは使い放題。もちろんエコロジーという概念はまったくないから、道端に平気でゴミを捨ててゆく。

 自宅の敷地をブロック塀で囲うという悪しき因習を、いまだに引きずっている人がいる。あんなものは防犯上、何の役にも立たない。お金をかけるだけ無意味もいいところだし、むしろ地震のときに崩落して思わぬ事故につながる。だいいち自宅を塀で囲むという人間は、心の周囲に壁を作る人じゃないかと思う。

 そういうところにこそ、バリアフリーの思考が必要なのではなかろうか。

 20年前、私や家族が土地の人たちから冷たい視線を投げられたが、それと同じことを、今は移住者のほうがやっているのだ。

 そんな人たちは、地元の活動にいっさい参加しない。むろん出不足金も出そうとしない。区費はともかく、消防負担金も拒否する。ところが、もしもその人の家から火が出たら、やはり消防団としては無視するわけには行かない。消防車に乗って火を消しにくるだろう。