喘息による呼吸困難で緊急入院
――その後、ストレスから柳生さんは倒れて入院していますよね。
柳生 2022年10月に喘息による呼吸困難で倒れたんですけど、そこがストレスのピークでした。倒れる1ヶ月くらい前に不眠になって、1日1時間も眠れないような感じだったんです。それで「ああ、寝られそう」と思ったら赤ちゃんが泣きだして寝れなくなって、ついつい大きな声で怒ってしまったんです。上の子たちに対しても「疲れて眠くて仕方がないのに絡んでくる」と厄介者のように感じて、優しく相手することができなくなってしまって。
そうしたら、妻から「あなた、たぶん病気だよ」と言われました。ちょっと自分でも調べてみたら「これはうつ病じゃん」と思って。家族と平穏に暮らしたくて移住したはずなのに、家族に迷惑をかけていたら本末転倒だなって。それで「もう限界、引っ越します」と。まずはお世話になっていた人たちに「ごめんなさい」と言って、その後に行政側の支所長にも話をしました。
――地域で仲良くされていた方々は、柳生さんの決断に対してどのような反応を。
柳生 「早く引っ越したほうがいいよ」という感じで、引き留められることはなかったです。住民の方からも以前辞めていった方たちもやはりトラブルが原因だったという話を聞いたので、私の前にいた元隊員の方に連絡を取って「なぜ地域を離れたか教えてもらってもいいですか?」と聞いてみたんです。
いろいろ無理難題を押し付けられたり、地域内の対立構造があったがゆえに双方どちらの言うことが正しいのかわからなくなって病んでしまったと。田舎と都会というバックグラウンドの違いもあってか、やり方や考え方の溝を埋められず、だんだんと大きくなってしまって最後には取り返しがつかなくなるということはよくあるみたいです。
自宅が火事に巻き込まれて
――そして、とどめを刺すとばかりに柳生さんのご自宅は火事に巻き込まれてしまうんですよね。
柳生 あれは、次の移住先に引っ越す5日くらい前に起きたんです。家族そろって晩ごはんを食べていたら、別の方が暮らしている2階の部屋が火事になって。僕らはまったく気づいていなくて「今日は換気扇の吸い込みが悪くて、部屋のなかがモクモクしてるな」くらいにしか感じてなくて。
お世話になっている方が気づいて、消防車を呼んだ後に電話してくれたんです。「柳生さん、火事だから出てきなさい!」と言われて飛び出したら「メチャクチャ燃えてるじゃん!」って。「CGかよ」ってくらいに燃えてましたね。地域の大多数の方や消防団の方が集まって消火してくれましたけど、家財道具もなにもかもビショビショになってしまって。
火事に巻き込まれるなんて、目に見えない力で出ていくように動かされているんじゃないかって。精神的に出ていかなきゃいけないところまで追い詰められていたけど、物理的にもそうなると思いませんでしたから。
――火事に背中を押されて、再移住を決意したと。
柳生 家族全員で「住むところがないんだもん。引っ越さないとしょうがないね」って開き直りました。お焚き上げだなって。