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――そうなってくると自己肯定感も上がって、話し方や表情なども変わりそうですね。

柳生 自信はついたようですね。東京では能力が低い扱いでしたけど、移住先では先生から「手伝って」といろんなことをお願いされるし、1人しかいないから学級委員もやらなきゃいけない。いままでは「誰かがやってくれるからいいや」という感じでしたけど、人が少ないから「やる人、私しかいないじゃん」となって、主体性や責任感みたいなものが育まれたなと思います。

命をいただくことを目の当たりに

――食べ物の好き嫌いなどに変化はありましたか。

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柳生 身近にイノシシやシカがいて、それを猟師さんが解体して、そのお肉をもらって僕が調理してみんなで食べることで、命をいただくことを目の当たりにして。それによって食に対しての思いが変わったのか、好き嫌いはなくなりましたね。当初は抵抗や衝撃があったようですけど。

 あと、娘は野菜が嫌いでしたけど普通に食べられるようになりました。お野菜をいただけることが多くて、「いつも優しくしてくれる、おじいちゃん、おばあちゃんが作った野菜だよ」と教えると、娘のなかで「食べたい」よりも「食べなきゃいけない」という気持ちが出てきたようで食べ出しましたね。

現在住んでいる高知県大川村で撮影したもの 写真=本人提供

人間関係が狭くて濃密な田舎

――お子さんたちに関しては、人とのつながりがいろいろな変化を与えたようですね。田舎の良かった面を聞きましたが、「ちょっとなぁ」と感じる面はありましたか。

柳生 それでいうと“あらぬ噂”ですかね。ちょっとしたすれ違いが起きた途端、すぐに噂を流されたりとか。100人もいない集落だったので、誰かが私のことを悪く言っているのが子どもの耳にすぐ入って、子どもから「お父さん、○○さんに嫌われてるの?」なんて聞かれたりして。

 人間関係が狭くて濃密だけど、そこが弊害でもありました。これは移住した多くの方がおっしゃっていますね。

――コミュニケーションが密だからこそ、それにまつわるストレスは東京よりも大きいんですね。

柳生 たとえ知らない人であっても、絶対に挨拶だけはするようにはしていました。歩いて地域内を移動していて、誰かと会ったら常に声を出して「おはようございます!」「こんにちは!」「こんばんは!」って。まぁ、挨拶はどこにいても大事ではあるので。

現在住んでいる高知県大川村で撮影したもの 写真=本人提供

 でも、2022年の4月あたり、移住して半年くらいで、そういったコミュニケーションなどのストレスからもうこの地域から離れたほうがいいんじゃないかと思うようになりました。(#2に続く)

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。