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「“動仕”の海外依存率は、感覚値で全体の8割以上だと感じています」

 テレビアニメの年間タイトル数は近年300本の大台を超え、加えて劇場アニメも年間70タイトル以上制作されるようになっている。それらの映像作品の大元となる「絵」を生み出す原画担当者は、アニメ制作ソフト開発会社の調査(http://animationbusiness.info/archives/10076)によれば5,000人程度。

『サイバーパンク: エッジランナーズ』などを制作したTRIGGER取締役の舛本和也氏は「“動仕”の海外依存率は、感覚値で全体の8割以上だと感じています。また原画マンの数も絶対的に不足しており解決が急務」と話す。TRIGGERでは社内に、原画・動画の担当者を抱え、今回のような不測の事態に対応できる社外のネットワークを構築しているが、多くの中小のスタジオはそのような備えが無いのが実際のところだ。

サイバーパンクエッジランナーズ 公式サイトより

 アニメの放送休止・延期は、中国の状況が収まれば一時的に沈静化する可能性はある。しかし国内でアニメ制作が完結せず、しかも原画の多くが手描きであることによって制作に多大なエネルギーがかかる構造自体が変化しなければ、いつ再発してもおかしくない。

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 そしてコロナ禍は終わっても国際情勢の変化など長期にわたる影響が出た場合、現在のようなタイトル数を維持できなくなり、日本のコンテンツ発信力そのものが低下してしまう可能性もある。

 優れた職人たちによる「手描き」の文化は、多くの名作アニメを生み出してきた。しかし少ない作り手で膨大なアニメ作品を作り続ける現在の制作環境においては、ボトルネックになりかねない。制作工程のデジタル化、AIを用いた中割などの自動化、地方も含めた制作拠点の増強など一朝一夕に解決できない事柄が多いのだが、日本のコンテンツパワーの源であるアニメ文化が発展していくためにも、対策が急がれるところだ。