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廣瀬はこの提案を受け入れたが、あいにく身元引受人である母の体調が思わしくないなど、仮出所の条件が整わない。
「だから、また狂って『話が違うだろ』と暴れることになり、判決通りに5年務めての満期出所。27歳になってました」
刑務所が母親に「精神病院」を勧めたことも…
出所をめぐってもひと悶着あった。刑務所は母が面会にくるたび、廣瀬は外に出したら何をするかわからないとして、精神病院に連れていくことを勧めたのだ。うろたえる母に、「私は狂ってない。すべて演技だ」と説明し、母が同居して監督するのを条件に通常の出所が認められた。
外に出られたことを実感できたのは、迎えにきた母と刑務所の敷地を出たときより、2代目総長のナナを中心とするレディースの後輩たちが数十名集まって開いてくれた出所祝いのときだったという。
廣瀬が不在の間も『魔罹啞』は存続し、12代まで引き継がれていた。
「明美さん、お会いしてみたかったっす!」
若手のメンバーにとって、初代総長は伝説的な存在。5年ぶりに聞く「明美さん」という呼び名に、待たれていたという実感が湧いてくる。
長い間留守にしていたのに、自分のことを忘れず、こんなに集まってくれるなんて……。かわいい後輩たちと夜が更けるまで杯を重ね、しこたま酔った廣瀬は、独居房で孤独に吠(ほ)えていたときとはまるで違う明るい声で叫んだ。
「みんな、まだまだ気合入れてやるよ!」
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