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 例えば、いつものドライブで流れる曲。3人のときはPerfumeの「ポリリズム」だったのが、まりりん(水川あさみ)を含めた4人のときはSPEEDの「White Love」になっていた。さらに「Go to hell /To tell the truth, I'm coming back to life many many times.」と書かれたパーカーを着用していた市役所職員の河口さん(三浦透子)は、ほんとうに何度も生き返っていて、第9話時点では人生8周目だった。

 このように意味深なエピソードを気持ちよく掬いあげていく『ブラッシュアップライフ』は、“伏線回収”を求めるいまの視聴者の嗜好に合う作品だといえる。

膨大な量の「平成あるある」

『ブラッシュアップライフ』は、視聴する“私たち自身の物語”を想起させるドラマでもある。

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 鍵となっているのは、あーちんたちが体験してきた平成のポップカルチャーだ。シール交換やセーラームーンごっこ、ドラマなら『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)や『GOOD LUCK‼︎』(TBS系)、音楽ならORANGE RANGEの「イケナイ太陽」やZONEの「secret base~君がくれたもの~」などなど……。

 ドラマは平均視聴率30%以上、CDセールスはミリオンも珍しくなかった、日本の黄金期を彩るものばかり。近年つづく平成のリバイバルブームもあり、当事者ではなくとも、誰もがついエモく感じてしまう時代だ。

©AFLO

 先述した『silent』もそうだが、実在する音楽や文化をそのまま劇中に使った作品といえば、2021年に大ヒットした映画『花束みたいな恋をした』が挙げられる。テレビドラマの名手・坂元裕二初のオリジナル映画作品は、それまで坂元作品に触れてこなかった(または意識していなかった)映画ファンや一般層を取り込み、興行収入は38億円を超えた。

 終電を逃したことからはじまる大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)の恋物語には、実在の固有名詞があふれている。穂村弘、長嶋有、いしいしんじ、柴崎友香、天竺鼠……。好きな作家や映画が同じだった二人は、意気投合を越えて“共鳴”しあう。決め手となったのは麦の家にある本棚だ。並べられている本を眺めながら、絹は「ほぼうちの本棚じゃん(笑)」と呟く。偶然の出会いを運命に変えるには、十分“通”なラインナップだった。