グレーのスウェットにサンダル姿の男は遠い目をしながら自身に対する実刑判決の言い渡しに耳を傾けていた。かつて繁華街の売れっ子精神科医としてブイブイ言わせていた頃の面影は失せ、覇気の無い表情と犯した罪の不釣り合いさが奇妙に映る。
東京地裁は2月27日、交際していた患者のA子さん(20代)を殴る蹴るなどした傷害罪と別の女性に対する名誉毀損罪に問われていた伊沢純被告(52)に、懲役2年4カ月の実刑判決を言い渡した。伊沢被告はかつて東京・歌舞伎町で精神科専門の「東京クリニック」の院長をしていた。
『無理矢理ではない』強制性交について否認
A子さんは昨年、文春オンライン取材班のインタビューに応じ、伊沢被告との出会いから被告による苛烈なDVや異常ともいえる性癖について赤裸々に語っていた。警視庁は2022年3月以降、A子さんを含めた複数の被害者に対する数々の伊沢被告による犯罪行為の摘発を目指し、6回もの逮捕を繰り返した。大手紙司法記者が解説する。
「A子さんのほかにも、女性患者に対する強制性交などの罪に問われていましたが、客観的な証拠が乏しい物も多く、捜査当局は堅い部分だけで確実に有罪に持ち込みました。伊沢被告が罪に問われたのはA子さんに対する傷害と、別の患者であるB子さんに対する名誉毀損です」
東京地裁の判決文によると、伊沢被告は2021年9月から10月にかけ、5回にわたり学校法人Xのホームページにアクセスし、「B子さんが幾度もの窃盗癖でドン・キホーテや友人宅、デリへルで男性の財布から現金20万円や薬1000錠以上の窃盗を行い新宿警察署に逮捕されましたがいまだ被害にあった方への弁済がありません」などと書き込み、名誉を毀損した。さらに2022年2月26日、歌舞伎町にあった自宅でA子さんの右頬を殴り、ベッド上から床に引きずり降ろし、両太ももを足で蹴るなどの暴行を加え加療約14日間を要する左下腿部擦過創、左前腕縫合創の離開の傷害を負わせた。