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自宅にガサ入れ、ショックを受けた息子は…

 渡辺には事件発覚当時、小学校4年生ふたりと幼稚園生ひとりの子どもがいた。ウグイス嬢と「100人」の両方の買収事件で検察の標的にされたため、安佐北区にある自宅には2度もガサが入った。

 市中心部から車で30分ほど、随所に畑が残る長閑かな新興住宅地に建つ、庭なしの2階建て。自動車1台が通れるほどの狭い道には、早朝からテレビカメラが並び、ガサ入れの瞬間をとらえた。その時、子どもたちはコロナ蔓延による一斉休校で家におり、渡辺が検察と押し問答する様子を泣きながら見守った。ママが怖い人に意地悪されている──。息子のひとりはそう思い詰め、ショックで不登校になった。

保釈時の河井案里氏 ©文藝春秋

 渡辺は克行から受け取った10万円の違法性を否認し、供述調書への署名を拒み続けた。すると、エディオン会長の実父のもとにも捜査の手を伸ばすと検事から脅された。デザイン事務所を営む夫も案里にウグイス嬢を紹介した関係で取り調べを受け、仕事にならない。渡辺は家族に及ぶ余波の大きさを考えた結果、「週刊文春」の単独インタビューを受け、記者会見も行い、案里を糾弾するに至った。

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案里氏と決別した理由

「あれは案里さんへの絶縁宣言のつもりでした。私は一番近かったというだけで、検察庁に連日呼ばれ、『もっともらっただろ』と脅され、見せしめにされる。自分と家族を守るためには、自ら発信して世間の誤解を解くほかなかった。案里さんには申し訳なかったけど、私は家族を選びました」

 渡辺は夫妻の刑が確定した2021年10月に私の取材に応じ、案里と決別した理由をそう語った。

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