昨年は右打者には1本しか許していない本塁打を、左打者には6本打たれた。サイド気味の変則フォームもあって右打者には支配的な投球を見せるが、真っ直ぐがシュート回転して失投がある。大谷に教わったのは、その苦手の左対策だった。
「まだ細かいことは言えないんですが、マウンドでの立ち位置ですね」
大勢は大谷のその教えをこう明かした。
「強化試合の時からピッチングを見ていただいていて、『強いボールだね』と言っていただきましたが、自分は左バッターが得意じゃないので『どうしたらいいですかね』って聞いたんです。そうしたら色々と話をしてくれて。こうしたらいいんじゃないの、と教えていただいたのが立ち位置でした。試合で試そうかと思ったんですけど、失敗したら無になってしまうので。でもいずれ(立ち位置は)そうなっていくと思います」
おそらく教わったのはマウンドでプレートに足を置く位置だろう。一塁側に置くか、三塁側に置くかで、打者への投球の角度が変わってくる。投手にとってはいつもと違う立ち位置は違和感を生むことになるが、打者にも投球の角度が大きく変わることで、同じボールが全く違ったようにみえるという効果が生まれるのだ。大勢の話からはそういうことを利用してみては、というのが大谷のアドバイスだったと想像できる。
1球も失投は許されないのがクローザーの宿命
こうして栗林に2年目の精神面を教わり、大谷には苦手な左対策のヒントをもらった。そんな教えを胸に、大勢は世界一まで残り3試合で試合の最後のマウンドを締める。
「1球1球勝負する、思い切って勝負する気持ちで投げるんですけど、その1球1球を精度の高いものにしたいと思います」
1球も失投は許されないのがクローザーの宿命である。そしてその精度の大切さを教えてくれたのも、代表で共に過ごしてきた離脱した栗林だった