「あなたは欲張りすぎです」大先輩からの一言に恥ずかしさが込み上げてきた
——古舘さんには「俺とお前は似ている。欲張りで生意気だ」と言われたそうですね。
宇賀 そうです。まず「申し訳ないけど、俺には何の決定権もないんだよ」と。そのあと言われたのが「あなたは欲張りすぎです」という言葉でした。
——著書の中にある、古舘さんの「俺も最初からプロレスの実況がしたかったわけじゃない。本当は野球とかをやりたかったけど、機会がなかった。だから、プロレスの世界でどうやったら人と差をつけて認めてもらえるか、それしか考えてなかった」という言葉がとても印象的でした。
宇賀 言葉が出ませんでしたね。たかだか2~3年でそんなことを言ってしまったことに、恥ずかしさが込み上げてきました。古舘さんはそんな私を邪険に扱わず、誠実に向き合ってくれた。それに今思えば、「自分に似てる」なんて最高の褒め言葉ですよね。本当にありがたかったです。
スポーツキャスターに就任後、球場へ通い詰めて勉強
——そのあと無事に『報道ステーション』内のスポーツキャスターに就任されました。でも当時はスポーツにあまり詳しくなかったとか。
宇賀 そうなんです。野球のヒットとタイムリーの違いすら、よくわかっていなかったくらい。でも私は基本的に「どうせやるなら楽しんだほうがいいよね」って考え方なので、きっと「私がやる意味」があるんだろうと考え直しました。
——宇賀さんだからこそやる意味、ですか。
宇賀 私にできることは「詳しくなりすぎた人には気づかないような、素人目線だからこそ伝えられるものを見つけること」だと思ったんです。新聞のスポーツ欄は毎日全部目を通して、分からない単語には赤線を引いて覚える。そして、空いている日は球場に通い詰めました。
素朴な疑問は、恥ずかしがらずにスタッフ達にぶつけていました。「なんでエースがいるのにその人が毎日投げないんですか?」とか、今思えばおかしな質問だったと思います。それでも誰一人として馬鹿にすることなく、ひとつひとつ丁寧に教えてくれました。