独特の緊張感が生まれていた『モーニングショー』の現場
——別の厳しさ、というと?
宇賀 『モーニングショー』は1つのテーマをスタジオでしっかり深掘りし、出演者の方々がコメントしていくスタイルの番組。大まかな流れは決まっているものの、基本的には本番一発勝負の世界でした。独特の緊張感の中で台本にない白熱した議論が生まれるのも、番組ならではの面白みでした。
さらに私自身も「宇賀さんはどう思うの?」と意見を求められる場面があって。錚々たるメンバーの中で、専門家でもない私が言えることは何なのか。事件や事故などの深刻なニュースから、エンタメに至るまで多岐に渡るテーマについて、限られた時間で自分の考えを伝えなくてはいけない。
そのためには日頃から徹底的にリサーチをして、自分自身の考えをまとめておく必要がありました。本当に難しかったですが、この経験ですごく鍛えられて成長できたんじゃないかとも感じています。
SNSのネガティブな意見も反省材料にしていた
——視聴者や番組ファンからはどのような声が寄せられていましたか。
宇賀 最初はネガティブな意見が多かったんです。というのも、『モーニングショー』がスタートする10年ほど前からずっと、アナウンサーの赤江珠緒さんが同じ時間帯で番組をやっていて、赤江さんには根強いファンがいました。
アナウンサーが私に代わるというニュースが最初に出た時には、「あんな若い女子アナに、たまちゃんの代わりは務まらない」みたいなコメントも少なくなかった。
普段SNSを見ないタイプだった私も、そのコメントを偶然目にして、さすがに面食らいましたね。「あ、私こんなに嫌われてたんだ」と初めて知って。
——たしかにそれまでのイメージが強いと、後任の方からするとやりづらいですよね。
宇賀 局アナ時代は、最初の気象キャスターもそうですが、基本的に前任の方がいてスライドしていくことが多い。これまで毎日見ていた視聴者の方からしたら、突然異質な存在が入ってくることになりますよね。
少しでも違和感を減らして安心して見ていただくために、前任者の声のトーンやテンポ、話すスピードなどを徹底的に真似してから入るようにしました。ただ、どんなに真似してもその人本人にはなれません。だからこそ結果的に、きちんとオリジナルになる。徐々に自分らしさを出していくようにしました。