それに、視聴者の方の忌憚ないご意見も的を射ていると感じる場面もあって、勉強になりました。「この言い方をすると誤解されやすいんだ」「もう一言付け加えればよかったな」とか、反省材料にしていましたね。
アナウンサーは私にとって天職のような仕事
——他にも、メディアなどで心無い声や誹謗中傷を受けることはありましたか。
宇賀 アナウンサーの追っかけをするいわゆる「カメラ小僧」の方たちから、勝手に写真を撮られるのは結構辛かったです。プライベートでも仕事現場でも写真を撮られて、ファッションチェックとして採点されたり、同じ選手への取材が続くと「〇〇選手を狙っている!」などと好き勝手書かれてしまう。「私は一生懸命仕事しているのに」ってショックが大きかったですね。
ただその度に「みんなそんなに気にしていないから大丈夫」「私なんてもっと酷いことを書かれてたよ」と慰めてくれる先輩がいて、救われました。
自分では芸能人のつもりがなくても、そう扱われることもあるんだと知りましたし、「それだけ興味を持ってもらえていてありがたい」とポジティブに捉えるようにしました。
——女性アナウンサーならではの苦労でもありますね。
宇賀 でも総じて、局でのアナウンサーの仕事は全部楽しかったんですよ。同じ会社にいても、担当ジャンルや番組が変われば、転職したくらいに働き方もライフスタイルも変わる。飽き性で好奇心旺盛な私にとっては、天職のような仕事でした。
ベトナム旅行で退職の決意が固まる
——それでも退職を決意されたのはどうしてでしょうか。
宇賀 局アナとして経験しうるほとんどの仕事をやらせてもらえて、とても恵まれていたと思います。でも社会人になって10年という節目のタイミングで、今後の人生やキャリアについて考える時間も増えていて。
ずっと不規則な生活だったので、それを変えたいという気持ちもありましたし、このまま5年、10年……と局アナのキャリアを考えたら、給料とかポジションとか、なんとなく将来を想像できてしまう。そうなると、仕事を「こなす」ようにならないだろうかと。同じ場所にとどまっているより、外の世界に一歩踏み出して、経験を積みたいという思いが湧いてました。
ただ、「退職」の2文字が脳裏によぎっても、なかなか踏ん切りがつかない自分もいて。そんな時にベトナムに行って、決意が固まったんです。
※ふるたちの「舘」は「舎」「官」が正しい表記です。
撮影=山元茂樹/文藝春秋