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無心に街を復興させる人々

 高層団地は雨あられの砲撃を受け、一面まっ黒焦げ。その一部は崩落したままで、前に訪れたときとなんら変わらない……と思ったがなんか違う。そうや、窓や。爆風により吹き飛んだ団地の窓ガラスのかわりにベニヤ板が張ってあるのである。どうやら一部の住民はこのゴーストタウンに戻り生活を営み始めているようであった。電気もなく暖房もない環境に成り果てても、やっぱり我が家がええのである。

昨年5月の地下都市の地上のサリトゥフカ地区。現在もほとんど変わらぬいまだ人が住めぬ町である。ここに子供らの歓声が戻るのはいつになるのやら ©️宮嶋茂樹

 持ち出した家財道具や水などを運び上げ街を復興させようとしているのである。そんな住民の希望を吹き飛ばすかのように空襲警報が鳴り響く。ここらあたりは停電しているが、町の中心部から風に乗って聞こえてくる。しかしもはや手を止める人も、防空壕がわりの地下鉄駅に駆け込む住民もいない。

©️宮嶋茂樹

ミサイルの墓場

 サルトゥフカ団地のみならずハルキウ州に降り注いだミサイル、砲弾の一部が保管されているのが、地元住民呼ぶところの「ミサイルの墓場」である。荒涼とした光景が広がるまさに人類の愚かさを体現した場所である。

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今年1月のサリトゥフカ地区、今もロシア軍侵略の脅威は去っていない。団地周囲には新たな塹壕が掘られていた ©️宮嶋茂樹

 立ち入りにはハルキウ州検事局の許可とエスコートが必要であった。また、周囲の建物が写り込むようなアングルや、ミサイルに貼られた住所などが書かれたステッカーのアップのカットはNGと通告された。立ち会った検事局の広報官の説明を聞くまでもない。ここの場所がロシア軍に知れると格好の攻撃目標になるからである。

手前の残骸がロシア軍の短距離弾道ミサイル。今回は通常弾頭だったが、核弾頭も搭載できる。その上のがチタン製のミサイル。この一山だけで100万ドルの残骸である ©️宮嶋茂樹

 ここだけで1000発以上、1億ドル分のミサイル砲弾が集められたのである。1億ドルもの金が人を救うためでもなく、人々の暮らしをよくするためでなく、人を殺すために使われたのである。1億ドルものロシア人が支払った税金が使われたのである。ウクライナ市民の家や子供らの通う学校を破壊するために。

ここ「ミサイルの墓場」の多くがクラスター・ロケット弾の不発弾や残骸であった。航空機から投下するクラスター(収束)爆弾と違い、ロケットの推進力であるロケットエンジンを複数収束したタイプであり、宇宙船打ち上げロケットにも使われている ©️宮嶋茂樹

 よく見ると信管は抜かれているものの、弾頭が付いたままのもある。それらが枯草の間で卒塔婆のように転がり、まさに墓場の様相を呈していた。RPG7対戦車ロケット弾や157ミリ砲弾の不発弾から、9M27Kクラスター・ロケット弾、さらに立ち会った検事局広報官の話によると、ロシア軍の核弾頭も搭載できる最新式短距離弾道ミサイル「イスカンデル」やチタン製のミサイルの残骸まである。もうこのひと山1万円にもならんくなったチタンや金属のがれきも、もとは100万ドルの武器やったのである。(#3に続く)

ハルキウ州某所。ここへの立ち入りにはハルキウ州検事局の許可と報道官の同行が必要。ミサイルの大きさを表すためあえて写りこんだが、ここの場所を特定されたらロシア軍の標的になる為周囲の建物が写るカットの公表は禁止という条件が課せられた ©️宮嶋茂樹

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。