文春オンライン

連載池上さんに聞いてみた。

戦車を供与した欧米諸国はそれでもなぜ「戦闘機の供与」に踏み切れないのか?

戦車を供与した欧米諸国はそれでもなぜ「戦闘機の供与」に踏み切れないのか?

池上さんに聞いてみた。

2023/02/27
note

Q 戦車の供与と戦闘機の供与、その差は何? 

 ウクライナ情勢をめぐって、ウクライナ側からは欧米諸国らに「戦闘機を供与してほしい」と要望が上がっています。傍から見た印象としても、戦車の供与と比べて各国の首脳の反応は慎重なように見えるのですが、戦車の供与と戦闘機の供与の間には一体どのような“ちがい”があるのでしょうか。(50代・男性・会社員)

©️時事通信社

A 戦車は地上を走りますが、戦闘機は…

 戦車は地上を走りますから、ウクライナに侵攻してきたロシア軍をウクライナ国内で迎え撃つことができます。つまり、自国防衛用として運用でき、ロシアへの脅威になりにくいのです。

 これに対し、戦闘機は簡単にロシア上空に達することが可能ですから、ロシアへの攻撃に使われる可能性があります。各国は、自国が供与した戦闘機がロシア本土への攻撃に使われた場合、ロシアによる報復攻撃や第三次世界大戦になってしまうことを恐れて、戦闘機の供与に慎重になっているのです。

ADVERTISEMENT

戦闘機は簡単にロシア上空に達することが可能なため、ロシアへの攻撃に使われる可能性が……(ウクライナ・キーウ郊外、2016年)©️時事通信社

 また、戦闘機は戦車より高額ですし、戦闘機を渡せば済むというものではありません。戦闘機を有効に飛ばすためには、膨大な部品や補給品が必要だからです。とてつもなく費用がかかる上に、地上での支援要員が必要になります。それだけの人員の要請にも時間と費用がかかるからです。

戦車を供与した欧米諸国はそれでもなぜ「戦闘機の供与」に踏み切れないのか?

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事