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「60歳の京平さんが、ラジカセでDragon Ashを…」近田春夫と西寺郷太が間近で感じた、作曲家・筒美京平の“凄さ”

「60歳の京平さんが、ラジカセでDragon Ashを…」近田春夫と西寺郷太が間近で感じた、作曲家・筒美京平の“凄さ”

近田春夫さん、西寺郷太さん特別対談 #2

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 芸能, 音楽, 歴史

note

「ロックにやられちゃった人は日本もヨーロッパも同じ」

近田 この『90’s ナインティーズ』から、去年読んだ『メタル’94』(ヤーニス・ヨニェヴス著)という本のことを思い出したんです。知ってますか?

西寺 おー、知らないです。

近田 1994年の話で、ソ連から独立したラトヴィアでヘヴィメタルを聞いていた若者が出てくるんだけれど、これも郷太君の本と同じで、作者の実際の体験に基づいた半自伝的小説なの。そういうのがすごく好きな子の青春を描いているんですよ。

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西寺 必ず読みます!

『メタル’94』(ヤーニス・ヨニェヴス著)

近田 もう日本とは全然文化が違うじゃない。だけど、ロックにやられちゃった人は日本もヨーロッパも同じなわけ。もう気が狂うようになってバンドをやったり、その中でちょっとした恋愛の諍いがあったりとかね。郷太君の本とすごく似ているのよ。ただ当時の向こうはさ、日本と違って状況が切実だからね。

西寺 94年っていうとソ連が崩壊した少し後くらいですかね。

近田 そうそう。戦争が起きている今のウクライナとはまた違うだろうけど、あの時代の混乱もわかるんですよ。なんといってもタイトルがすごく似ているでしょう。向こうは『メタル’94』で、こっちは『90’s ナインティーズ』。

西寺 僕の方がなんだかすべてを網羅してる感が出ていて偉そうな気もしますが(笑)。

バンドの魅力はいろいろな人間関係

近田 郷太君の本の内容だけどさ、やっぱり君はバンドが好きなんだなっていう感じがしたね。その「バンドに魅力を感じる」ということは何かというと、音楽を作ることだけじゃなく、いろいろな変な人間関係にもあると思うのよ。バンドの中で先輩後輩があるとか、同世代でもあいつは俺より才能が落ちるなとか、そういうことをお互いに感じたりとか。でも、基本みんな友達じゃんみたいな。その幸せな感じというのは、自分が20代の頃、60年代の終わりから70年代ぐらいに感じていたのとまったく同じで変わっていないんだなと思ったね。

近田春夫さん ©文藝春秋

西寺 ですよね、ライバル関係もあって。誰も結婚していないので誰かと誰かが付き合ったり、別れたり。それで疎遠になったり。

近田 ただ僕らの頃に比べて、郷太君の本で描かれている90年代はいろんな音楽の情報が豊富だったから、それは読んでてほんとにうらやましいなと思ったよ。

西寺 90年代はもちろん近田さんも活躍されていましたけど、旧譜の再発などの文化も盛り上がっていたと思います。レコード業界にもやっぱりお金もありましたし。だからそういう意味で言うと情報量が増えても、気持ちの部分の根は一緒なんじゃないかと。