大和田 もう悔しくて悔しくて……それ以来、先生の赤字に抵抗する気持ちで生きてきました。役者になったのも、少しでも有名になれば、「理想を訴える」力を持てるんじゃないかと考えた部分もあります。
しかしこの年になるまで、そんな力は持ててないですけどね。せいぜい演出とか、映画を作ったときに願いを込めるくらい。でも、それで終わらせるのは悔しいじゃないですか。だから人と人が仲良くつながれば、みんなが幸せになれるんだって、死ぬまで言い続けようと思っているんです。
注意しない大人が増えている
――昔に比べて「注意しない大人が増えている」とはよく指摘されています。
大和田 僕がオヤジ狩り被害にあった2000年頃は、非常に殺伐とした雰囲気がありましたし、「キレる若者」という言葉が出てきたのもその頃です。
ただ社会全体がそうだったから、当時の若者も心に閉塞したものを抱えていたのかもしれない。僕の場合、殴る若者がいるというよりも、それを見ているのに、何も言わない大人がたくさんいることのほうが嫌でしたね。
――なるほど。
大和田 だって僕のオヤジ狩り報道が出てから、いろんな人から「電車でこんな若者がいます。大和田さん、ぜひ叱ってください」なんてお手紙をもらうようになったんですよ。
つい最近も、大人から「信号無視をする若者がいっぱいいるから、注意してください」と言われました。でも、それは違うじゃない。
僕が子供の頃は、近所のおじさんからよく注意されたものです。でも、そのおじさんは普段からよく世話をしてくれるなど、お互いに信頼関係があったんですよね。だから、ただガミガミうるさいだけじゃないということが、子供心にもわかっていました。一方で、今の大人が子供から信頼されるほどの関係を築けているのかどうか、というのはありますよね。
感謝の気持ちを忘れないことが大事
――大人が、自ら直接言わないといけない。