自分の子供がお腹にいる喜びようが凄くて、そんな彼女の姿を目の当たりにしたら「じゃあ、一緒に頑張って育てよう」という気持ちに切り替わりました。
障害の有無を判別できる出生前診断は受けず
――高齢の場合は出産自体のリスクも上がりますが、病院でもそうした説明を受けましたか。
中本 最初は産婦人科のクリニックでエコー検査を受けていたんですけど、高齢出産で生じやすいリスクを避けるために、日本医科大学付属病院で面倒を見てもらってくださいと言われて紹介状を書いてもらって。
で、日本医大でも順調との診断だったんですけど、お腹にいる赤ちゃんがダウン症かどうか、先天性疾患があるかどうかを判別できる出生前診断がありますよ、と説明されました。
――高齢出産になると、ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率が上がるといわれていますしね。
中本 でも、うちは受けるのはやめました。診断にあたって絨毛(じゅうもう)細胞を採取するんですけど、それを取るにはお腹に針を刺さないといけないんですよ。お腹に針を刺すことに、まったくリスクがないわけじゃないなと。
あと、仮になにか障害を抱えていると判明したとして「だから産まない」なんて選択はできない。病院の検査でお腹のなかにいる子供が元気に動いているのを見ると、そのたびに「一生懸命に育ってるんだなぁ」って愛おしさが募ってくるんですよ。
おたふくのウイルスが心臓に飛び、劇症心筋炎に
――お腹のお子さんが順調に育つなか、予定日の2ヶ月前にパートナーがおたふく風邪に罹って、そこから心筋炎まで引き起こしてしまったそうですね。
中本 安定期に入って、「体を動かしたほうがいい」と言われたんですよ。それで妻は講師の仕事を再開したんですけど、それでおたふくをもらってしまったみたいで。
日医大からは「かかりつけのお医者さんで薬をもらって安静にしてください」と。妊婦は簡単に薬を飲めないので、飲んでも大丈夫な薬を飲んで様子を見ていたら、ほっぺたはしぼんできたけど、息苦しさが激しくなってきて。もう息も絶え絶えで、喘息の呼吸困難みたいになったけど、彼女は我慢しちゃって。僕もむりやりにでも病院に連れていけばよかったんでしょうけど。ほんと、そこは反省していますね。
で、僕が会社に行っている間に、妻は家から5分くらいなので歩いて日医大に行ったんですよ。そうしたら「こんな状態では家に帰せないから、このまま入院してください。お子さんに異常はないので、病院で治療して産みましょう」と。
――それでも悪化してしまった。
中本 ウイルスが心臓に飛んだんです。どのタイミングで飛んだのかわからないけど、それで劇症心筋炎になって。どんどん悪化して、心不全状態になりました。