大学生の新橋みゆさんも取材で「日本では性教育が男女ともに足りていない」と話していましたが、日本ではSRHRの概念が広まっていないと池田さんは話す。
産婦人科医でもある SRHRジャパン・池田裕美枝代表理事:
SRHRの根幹が、自分自身とどう付き合うか?という観点があり、自分が大切に思っている人とどう付き合っていくか?ということなんですけども、それらを教えることが、“包括的”性教育なんです。セックスや妊娠の仕組みを教える事だけが性教育だけではなくて、その前提として人権とか性の多様性とか、男性・女性・LGBTQの人も含めて“自分で決めていく”ための根本的な人間関係作りからスタートするのが“包括的”性教育です
ここで日本の人工妊娠中絶について考えます。日本では年間、約14万件の人工妊娠中絶があります(2022年 厚労省)。妊娠の6~7件のうち1件が中絶ということになるが、日本で人工妊娠中絶が合法化されたのは、障害者への強制不妊手術など問題があった旧「優生保護法」(1948~1996年)が実は最初の根拠だった。
産婦人科医でもある SRHRジャパン・池田裕美枝代表理事:
戦後すぐに、不良な子孫を残してはいけないとした「優生保護法」で、最初、人工妊娠中絶が合法化されたというのが日本の実情です。女性を守るというより人権とは逆の方向を向いた形での法律でした
日本での人工妊娠中絶の特徴についてみていくと…
▼掻爬(そうは)法・吸引法などの手術のみ
▼妊娠中の女性が薬物や他の方法により堕胎する堕胎罪に問われる
▼(手術などが)高額
さらに…
▼中絶には“配偶者の同意”が必要(G7では日本だけ)
産婦人科医でもある SRHRジャパン・池田裕美枝代表理事:
赤ちゃんを亡くならせるのが罪ですよ…というのが刑法の堕胎罪なんですけども、それの除外規定として今の「母体保護法」で人工妊娠中絶がいちおう合法になっていますが、医師の中でも母体保護指定医という特別の認可を受けた医師が行ったときのみ認められます。ですから、中絶が女性の人生を守るためにとか、(妊娠した)女性の命を守るためだ、という立て付けにはなっていないんです