火球の表面温度は数千度にも達します。したがって、もしみなさんがこの実線の円の範囲内にいたとすれば、残念ながら助かることはありません。人間の肉体などは一瞬で蒸発してしまい、後に骨さえ残らないといったことにもなります。
中心から2番目の破線の円が爆発時の放射線による致死範囲です。半径は2.1キロメーターになります。3番目の円が爆風による致死範囲で、半径2.8キロメーター。そして一番外側の円が熱線による致死範囲で、半径5.7キロメーターです。これらの数値は著者が計算によって求めました。爆風や熱線で「どれくらいの値であれば死ぬのか」という基準は後で詳しく説明します。
なお、ここでいう致死範囲とは、そこにいる人の50パーセントが亡くなると想定される範囲を表します。即死もあれば、致命傷を負って数時間後や数日後、あるいはもっと後に亡くなる場合もあります。
たった1発で東京が火の海に
核兵器による被害というと、多くの方は放射線によるものを思い浮かべると思います。しかし致死範囲の大きさから見るともっとも怖いのは熱線で、直径では10キロメーターを超える範囲に及ぶのです。たった1発で東京の都心部がほぼ全部入るくらいの致死範囲の大きさになる、これが160キロトンの核兵器の威力です。
それから、この地図に放射化物による被害範囲を描いていないのは、放射化物が広がる範囲は風向きなどによって大きく変化するためです。一般に、放射化物は非常に広範囲に広がります。分子くらいの大きさの放射化物だといったん成層圏まで上り、地球規模で広まります。その後何十年もかけて、少しずつ降ってくるのです。
さて、今回は星海社が標的となりましたが、みなさんもそれぞれ自分の住んでいる地域の地図に、それぞれの致死範囲の大きさの円を描いてみてください。核兵器の恐ろしさを実感できると思います。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。