「警察は証拠となる必要な資料を集め、関係者から事情を聞きます。しかし、大学トップの理事長が告発されているので、職員らが喜んで捜査に協力するとは考えられません。任意で要求した資料が出てこないとか、対応が鈍い場合は、令状に基づいて押収する。警察の隠語で『ガサ』と呼ばれるものです。
そして、最終段階として岩本理事長に事情聴取をして、検察庁に事件を送る。大体3、4カ月、長くても半年くらいのタイムスケジュールで捜査を進めるでしょう」
一般企業なら株主代表訴訟で交代させられるレベル
現時点で、岩本理事長や側近の経営幹部らは「疑惑のカネ」に関して、全面的に否定しており、文春オンラインの記事について「一部メディアの間違った報道」と決めつけている。
そして、3月14日に同窓会の会員向けに配布した文書には、こんな一文を掲載した。
「一部の現教授の指示のもと、岩澤氏による報道の内容はさらに激化しており、あたかも本学において犯罪行為が行われているとか、患者の命を救うことができない危険な医療体制となっているかのような内容となっております」
一連の報道は、文春オンライン編集部と筆者の協議によって進めている。“一部の現教授の指示”など、外部の意向が関与することなどない。根拠なき事実無根の情報を流すとは、教育機関としての見識を疑うばかりだ。加えて、ICUを担当する集中治療専門医10人中9人が一斉退職しており、現実的には、医療安全体制が崩壊していると指摘せざるを得ない。
医療ガバナンス学会の上昌広氏(元東京大学特任教授)は、女子医大の実状について、次のように指摘する。
「かつての女子医大病院は国内トップクラスでしたが、臨床を知らない・理解していない経営陣になって、優秀な医師が離れていきました。ICUが機能不全になり、赤字額が累積しても、経営陣に反省の色もない。一般企業なら、株主代表訴訟で交代させられるレベルです。告発状が受理された時点で、理事長以下、経営陣は総辞職して女子医大は出直すべきでしょう」
私立とはいえ、女子医大は、多額の補助金が投入されている公的な性格が強い組織でもある。巧妙な手口を使い、女子医大に損害を与えることなど、決して許されることではない。
国税OBに約2000万円の「成功報酬」
一方、東京国税局が、女子医大が製薬企業から受け取っていた資金について約2億5000万円の申告漏れを指摘、過少申告加算税を含めて約5500万円を追徴課税していた。
取材で入手した内部文書によると、去年7月、東京国税局から税務調査の事前通告を受けた女子医大は、顧問契約している税理士がいるのにもかかわらず、急遽「国税OB」の税理士を雇って対応にあたらせていた。
約半年間に及んだ調査の終了後、「成功報酬」という名目のカネが、国税OBの税理士に支払われた。去年7月から現在までに、この人物に対する報酬総額は、約2000万円に及ぶ。
普段から適切な会計処理をしているなら、あえて莫大なカネで「国税OB」を雇う必要性があるのか、疑問が残る。
告発状受理で「疑惑のカネ」の真相解明が幕を切った。
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