東京女子医科大学の岩本絹子理事長をめぐる「疑惑のカネ」が背任罪にあたるとして、OG(卒業生)の有志が警視庁に提出していた告発状が、3月27日に正式に受理されたことが関係者の取材でわかった。
元検事の落合洋司弁護士によると、告発状が受理されたことによって、警察の本格的な捜査が始まるという。「疑惑のカネ」は解明されるのか、今後の展開を探る。
さらに、東京国税局が約2億5000万円の申告漏れを指摘し、約5500万円を追徴課税していた問題で、女子医大が莫大な報酬で「国税OBの税理士」を雇って対応させていたことが内部文書で判明した。
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警視庁捜査2課が事件として本格的に捜査を開始
「母校の恥ですが、膿を出し切らない限り女子医大の復活はありませんので、警察には徹底した捜査をお願いしたいと思っています」
告発状が受理された知らせを受け、告発人の一人であるOGの女医はこう述べた。
複数の関係者によると、告発状は3月27日に、警視庁本部の捜査二課が正式に受理した。捜査二課とは、詐欺、背任、横領、贈収賄など、いわゆる知能犯罪を担当している部署だ。女子医大OGによる告発状は、去年9月に提出されていたが、今回の「受理」はどのような意味を持つのか? 東京地方検察庁で、オウム真理教の事件などを担当した落合洋司弁護士が解説する。
「告発状が提出されると、警察はまず“預かり”ます。そして、犯罪事実が特定されているか、事件として成立するか、検討するために一種の周辺捜査のような内偵も行い、場合によっては検察庁にも相談する。単なる疑いレベルなら、そこで終わりですが、正式に“受理”を決定したら、必要な捜査が始まります」
つまり、告発状の受理は、警察が事件として本格的に捜査を開始することを意味するのだ。
文春オンラインでは、岩本理事長の関与が疑われる、巨額の不透明なカネについて報道してきたが、主に3つのルートに分かれている。(#1、#2、#3、#11を読む)
“第1の疑惑”は、岩本理事長が会長を兼務する同窓会組織の「至誠会」から出向させた職員の「給与の水増し・架空請求の疑い」。総額は約2.5億円に上る。
“第2の疑惑”は、宝塚歌劇団の元月組トップスター・彩輝なお氏の親族が経営するケネス&セルジオ社との「公私混同」契約である。「至誠会」から出向させていた職員を、ケネス社の業務委託に切り替える際、理事会に社名や金額を示さずに承認を得ていた。岩本理事長は熱心な宝塚ファンであり、とりわけ彩輝氏を無名時代から応援している。また、自分の甥を専属運転手としてケネス社と月額66万円で契約し、総額1億円超を女子医大に支払わせていた。(*告発状での指摘は、8855万円)