業務の実態がなければ「背任」ではなく「詐欺」になる可能性も
“第3の疑惑”は、附属病院の移転や校舎建替えについて、嘱託社員の一級建築士C氏に、給与と多額の謝礼を「二重払い」していた点だ。月額約60万円の給与に加え、「建築アドバイザー報酬」として総額3億円を女子医大に支払わせた。
告発状は“第2の疑惑”に焦点をあて、「架空取引の疑いさえある」、「合計8855万円もの損害を、本件学校法人に与え、その犯情は極めて悪質」と厳しく指摘。刑法247条(背任罪)に該当するとして、告発している。
背任とは、刑法247条で次のように定められている。
“他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する”
女子医大のケースについて、落合弁護士が解説する。
「一般的に『背任罪』は、難しくてハードルが高い事件ですが、本件を警視庁が受理したということは、有罪の方向で立証できる見込み・見通しがある、という印象を受けます。
ケネス社に女子医大が支払ったカネが、個人的な利益を与えるような形で岩本理事長にキックバックされているか、東京女子医大に損害を与えたか、という点が捜査のポイントになるでしょう。また、告発状に『架空取引』という言葉が使われているとおり、本当に業務の実態がないと『背任』ではなく、『詐欺』になる可能性もあります」
ちなみに、詐欺罪は「10年以下の懲役」で、背任より重い刑罰が科せられる。
「金銭を不正に流出させる『ハコ』として存在していたと疑われる」
告発状は、ケネス社について、本店の所在地が通常の住宅で、ホームページもなく、いわゆるペーパーカンパニーなのか不明だと指摘。さらに、請求書の大半が連番であることから、女子医大の他に請求書を作成していないと窺われ、「ケネスには事業実体はほとんどなく、金銭を不正に流出させる『ハコ』として存在していたと疑われる」との見方を示した。
落合弁護士は、今後の捜査について次のように予測する。