「このまま何もしなければ、東京女子医大120年の歴史に幕を閉じてしまってもおかしくはないと懸念致しております」(女子医大を復活させるOGの会)

 患者数の激減や、医療崩壊によって存続の危機に陥っているとして、東京女子医科大学OG(卒業生)の有志が、遂に岩本絹子理事長の責任追及に向けて行動を起こした。一方、この動きを封じ込めようと、あの手この手で対抗措置を講じる岩本氏ら経営陣たち――。

 受験シーズンに突入する中で、女子医大の名門復活を賭けた攻防をレポートする。

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岩本絹子理事長(東京女子医科大学120周年記念誌より)

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志願者数が激減し、偏差値が下位に落ちた2つの要因

 2月1日、女子医大の一般入試が新宿の京王プラザホテルで実施された。職業のジェンダー差別撤廃が進み、医師を目指す女性が増加しているなか、女子医大の志願者数の推移をみてみると、人気が年々低下していることがわかる。

 2018年に、複数の私立大医学部が入試で女性を不利に扱っていた事が発覚すると、その反動から翌2019年の女子医大の志願者数は急増して1666人になった。

 しかし、岩本絹子氏が理事長に就任した翌年(2020年)から、志願者数が激減する。以降、減少傾向に歯止めがかからず、2022年の志願者数は681人だった。2019年と比較すると約1000人も減少しており、女子医大の偏差値は私立大医学部の中でも下位になってしまった。

女子医大の学費と志願者数の推移

 関係者によると、要因は主に2つある。

 まず、岩本理事長になってから経営方針が大きく変わり、優秀な医師や看護師が大量に退職するなどの混乱が生じたことが挙げられる。加えて、ボーナスゼロ宣言など、経営陣の奇異な対応が、各メディアで大きく報じられたことで、受験生の親に不安が広がったとみられる。

 もう一つの要因は、学費の大幅な値上げだ。2021年度に、6年間分で1200万円以上も値上げした結果、学費の総額は約4600万円に跳ね上がった。この額は私立大医学部の中で2番目に高い。

 一方、私立大医学部の「新御三家」と呼ばれる、偏差値トップ3の慶應義塾大、順天堂大、東京慈恵会医科大は、いずれも学費の総額は2000万円台の前半だ。

 なかでも順天堂大は、学費を約900万円も下げた結果、優秀な学生が集まった。そのため他の私立大医学部も追随しているが、このトレンドに見向きもせず、学費を大幅値上げした女子医大の人気が下降するのは必然かもしれない。