高度医療と安全体制が崩壊して、存続の危機に立っている東京女子医科大学。国内トップレベルの医師に約束していた金額分の給与支払いを拒み、退職に追い込むなど不可解な対応が目立つ。

 その一方で、岩本絹子理事長は自身の側近2人に破格の給与を与えるため、違法な契約を交わしていた可能性が浮上した。学内でかねてから問題視されていた謎の側近2人の正体、そして新たに判明した「疑惑のカネ」についてお伝えする──。

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総額1億円の契約と深く関係している側近XとY

 2019年10月、ホテルオークラで500人を超える招待客が集まり、岩本絹子氏の理事長就任祝賀会が盛大に行われた。その時に撮影された集合写真には、当時、自民党の幹事長として強い影響力を持っていた二階俊博氏がまるで守護神のように岩本理事長の横に鎮座している。

岩本絹子氏が理事長に就任した祝賀会の集合写真(「女医界」より)

 その斜め後ろに立つ黒いドレスの女性は、宝塚歌劇団の月組トップだった彩輝なお氏(当時の芸名:彩輝直)だ。無名時代から、岩本氏が熱烈なファンとして応援してきた女優である。

 隣は同じく宝塚歌劇団で活躍していた彩輝氏の実妹で、その夫は株式会社ケネス&セルジオ(以下、ケネス社)の取締役を務めている。そして、岩本氏が理事長になった翌年、ケネス社は女子医大と総額1億円超の契約を結んだ。

岩本氏が大ファンの彩輝直は宝塚月組トップだった(「女医界」より)

 その総額1億円の契約と深く関係してくるのが、元宝塚スター姉妹の背後に立つ、女性の「側近X」と青いネクタイを締めた男性の「側近Y」である。

「側近2人には何も情報がなく、素性が謎」

 さかのぼること8年前の2015年。当時、副理事長だった岩本氏は、赤字経営を立て直すという名目で、ヒト(人事)・モノ(管財)・カネ(経理)・情報(情報システム)を集約した「経営統括部」を新設して、担当理事に就く。

 こうして女子医大を“実効支配”した岩本氏は、腹心の部下として側近XとYを、この経営統括部に迎え入れた。長年、女子医大で勤務していた元事務職員Aは「この2人は謎に包まれていた」と振り返る。

「女子医大で新たに働く場合、必ず学歴や職歴の資料が添付されているものですが、側近2人には何も情報がありませんでした。教育機関かつ医療機関なのに、素性が謎なんて、あり得ませんよね。しかも2人には次長という職位が与えられ、驚くような高給取りです。違和感しかありませんでした」(元事務職員A)

 記録によると、側近2人は2015年10月に、岩本氏が会長を務める女子医大の同窓会組織「至誠会」からの「出向」として女子医大と契約していた。この時点で、側近Xの給与は月額55万円、Yは月額80万円とある。