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規定以上の報酬を与えるために“非正規”契約だったのか

 そこで女子医大は暫定的な対応として、翌5月から至誠会と「業務委託」契約を結び直し、側近2人をそのまま継続して業務にあたらせた。この時、契約金額は、月額合計330万円に減らされている。(*この契約金額には、2人とは別に運転手分が含まれている)

 その後、同年8月に側近Yは理事長特別補佐として月額44万円、同年10月に側近Xは月額121万円で、女子医大と個人として業務委託の契約を交わし、現在に至っている。

 このように“非正規”で契約を重ねた理由として考えられるのは、2人に高額な報酬を与えるためのカラクリだった可能性である。

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 仮に2人が女子医大の正規職員になると、給与(報酬)は規定の計算式が適用され、月額50万円前後になってしまう。これに対して「業務委託」の場合なら、2人の報酬は自由に設定可能だ。つまり、規定以上の報酬を与えるために“非正規”のほうが、かえって都合が良かったのではないか。

 問題なのは、「業務委託」契約に変更後も、2人が以前のまま、岩本理事長の指揮命令を受けて仕事を継続している点だ。法政大学法学部の沼田雅之教授(労働法)は、次のように指摘する。

偽装請負、労働者派遣法違反の可能性が高い

「業務委託とは、契約により請け負った業務を自己の業務として、当該契約の相手方から“独立”して処理するものであること等によって判断されます。したがって、岩本理事長の指示命令の下で2人が業務を遂行していたことが事実であれば、実際は労働者派遣であり、いわゆる『偽装請負』の可能性があります。また、ケネス社と至誠会が、労働者派遣事業の許可を受けていない場合は、『労働者派遣法違反』が成立します」

元宝塚スター親族企業のケネス社は“一般住宅”だった

 現時点で、東京都の派遣事業者として登録している中に、ケネス社と至誠会の名は見当たらない。

 これらの疑問について、女子医大と、側近2人が所属している(とされる)至誠会の代理人に対して質問状を送付したが、期限までに回答はなかった。

 複数の元職員の証言を重ねると、側近2人は、「部長代行」「次長」という肩書を得て、経営統括部の一員として岩本理事長の指示を受けている。したがって彼らは偽装請負であり、労働者派遣法違反の可能性が高いと言えるだろう。

 強引なコストカットを進め、人件費を抑制してきた岩本理事長が、その裏で側近に破格の報酬を与えるために、“業務委託”というカラクリを使っていたとしたら、許されることではない。

 違法性が判明した以上、女子医大と至誠会には真摯な説明が求められている。(了)

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