文春オンライン
「人手不足で救えない命がある」“経営破綻レベルの病床稼働率”に窮する東京女子医 OG教授の“決死の訴え”を鼻で笑った経営陣の“特殊な価値観”

「人手不足で救えない命がある」“経営破綻レベルの病床稼働率”に窮する東京女子医 OG教授の“決死の訴え”を鼻で笑った経営陣の“特殊な価値観”

東京女子医大の闇 #13

2023/02/01
note

丸学長が導入した「定員制」により、麻酔科にあった44名分のポジションがわずか6人分に

 今、女子医大は、急激な医師不足によって医療安全が脅かされている。実は医師不足が急激に起きているのは、丸義朗学長が進める「診療科の定員制」導入による結果だという。

岩本理事長と丸学長(東京女子医科大学120周年記念誌より)

 女子医大の特徴として、各診療科に高度な専門分野を担当する医師が多く在籍している。それに合わせてポジション(役職)も用意されていたが、丸学長は全ての診療科に原則として「教授 1、准教授 1、講師 1、助教 3」の定員制を導入させた。

 緊急集会では、「医師不足を解消するために、定員制を見直す必要がある」と麻酔科の長坂安子教授が訴えた。

ADVERTISEMENT

「麻酔科には44名分のポジションがありましたが、定員制でなんと6名分になりました。今年度の終りには、10名の麻酔科医を失う見込みです。(女子医大病院の中で)患者が急変すると、麻酔科医が走っていきますが、どうしても救えない命がある。人が足りないのを肌身で感じる瞬間です。なんとか女子医大が、人の命をこれ以上失わないように、医師の数が必要です。(定員制を)凍結していただくことは可能でしょうか」

 去年9月に、女子医大病院の集中治療医9人が一斉退職してからは、患者の急変時に麻酔科か救命救急センターが駆けつけるように、経営側が決定したが、そのマンパワーが足りないのだという。

麻酔科医は、外科手術で必要不可欠な存在(女子医大HPより)

「大学病院にとっての最優先事項が“医療安全”ということすら理解していない」

 だが、石黒医学部長は「それ(定員制導入)は別の議論」として取り合おうとせず、医師不足は、報道の“風評被害”だと繰り返し述べるだけだった。緊急集会の目的は、あくまで「復活させるOGの会」に賛同しないように呼びかけることらしい。

 この対応について、参加したOGの一人はこう話す。

「現場の私たちが憤りを覚えたのは、長坂教授の大切な指摘を、経営陣が嘲るように鼻で笑ったことです。長坂教授のキャリアを考えると、どうしてあんな態度が取れるのか分かりません。今の経営陣は、しっかり臨床をやってきた先生が少ないから、大学病院にとっての最優先事項が“医療安全”ということすら理解していないのです」(集会に参加した若手OG)

 長坂教授は女子医大を卒業後、聖路加国際病院を経て、ハーバード大学で11年間にわたり麻酔科医として活躍してきた経歴を持つ。若手医師の指導に定評があり、学内では尊敬を集め人望も厚い。他の大学病院では、こうした一流の臨床医に対して、深いリスペクトの念をもって接するものだが、女子医大の現経営陣には、別の価値観があるらしい。

OG会が予告ツイート「理事の一部について、解任を求める予定です」

 1月27日、「復活させるOGの会」のツイッターに、次の投稿があった。

「まもなく至誠会で臨時社員総会の開催請求を行います。理事の一部について、解任を求める予定です」 

1月27日に投稿された「復活させるOGの会」のツイート

「理事の一部」とは、岩本氏のことを指すのだろう。そして3日後には、この手続きを実施した旨が投稿された。解任が実現すると、岩本氏は権力の基盤を失い、女子医大の理事長職に留まることは難しいとみられている。

 追い込まれた格好の岩本氏だが、水面下で巻き返しを図っているという情報もあり、女子医大の未来を左右する攻防は、予断を許さない状況だ。

文藝春秋が提供する有料記事は「Yahoo!ニュース」「週刊文春デジタル」「LINE NEWS」でお読みいただけます。

※アカウントの登録や購入についてのご質問は、各サイトのお問い合わせ窓口にご連絡ください。

「人手不足で救えない命がある」“経営破綻レベルの病床稼働率”に窮する東京女子医 OG教授の“決死の訴え”を鼻で笑った経営陣の“特殊な価値観”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事