1ページ目から読む
5/5ページ目

同年に放送された『半沢直樹』との共通点

 ちょうどこの年の夏には、TBS系の「日曜劇場」で『半沢直樹』が放送され、最高視聴率が平成のドラマでは歴代トップを記録した。同作もSNSなどで盛んに話題になり、視聴率も『あまちゃん』がそうであったように、最終回に向かうにしたがい伸びていった。

 筆者は最近になって、『あまちゃん』と『半沢直樹』には大きな共通点があることにふと気がついた。それは、どちらも、主人公が親の落とし前をつける物語であったということだ。

有村架純はアキの母親の若き日を演じた ©文藝春秋

『半沢直樹』で堺雅人演じる主人公の半沢は、父親が経営していた町工場の融資をめぐり、その銀行の担当者に約束を反故にされたのが原因で自殺したという過去から、復讐を期すべく、大学卒業後、くだんの銀行の後身であるメガバンクに入った。物語が進むにつれ、半沢に対し、父を死に追い込んだ張本人である大和田(香川照之)が宿敵となって立ちふさがるが、最後には土下座で謝罪させるにいたり、視聴者にカタルシスを与えた。

ADVERTISEMENT

 一方、『あまちゃん』では、かつてアイドルになろうとして果たせなかった母・春子に代わって、アキがその夢をかなえ、さらには母とプロデューサーの荒巻や鈴鹿ひろ美との過去の因縁も解消へ導くことになった。復讐とはちょっと違うが、春子の過去の清算(その母親の夏との関係も含め)はこのドラマの大きなテーマであり、視聴者を釘づけにした末、ついには大きな感動をもたらすにいたった。

古田新太 ©文藝春秋

 いまにして改めて振り返ると、『あまちゃん』は芸能が人々の心を結びつけるという物語でもあったといえる。ここ3年続いてきたコロナ禍では、コンサートや演劇の公演などがさまざまな制限を余儀なくされた。そんな状況を経て再び放送される『あまちゃん』は、私たちにまた違った印象を与えてくれそうだ。