取材ライター「近づけそうで近づけない、うまさを感じます」
もちろんそうした魅力は、彼の演技力から醸し出されるものだろう。ただし、彼を何度も取材しているエンタメ系のライターは、役柄に少し共通するような“つかみどころのなさ”を感じるという。
「中村倫也さんは頭の良い方で、質問の意図を的確につかみ、記事にしやすい具体的なエピソードなど交えながら語ってくれます。しかし深掘りしようとすると、うまくかわされてしまう印象があるんです。近づけそうで近づけない、本音を漏らさない、そうしたうまさを感じます」
落ち着いた色気にマルチな才能、そしてつかみどころのなさ――。こうした魅力は中村の苦しい下積み時代によって培われたように思う。
16歳で所属事務所の養成所に入所し、18歳で俳優としての活動を始めると、2つ目のオーディションで合格、映画『七人の弔』(2005年)に出演するなど、順調なスタートを切ったが、すぐに仕事が激減。25歳までは年間わずか数本の仕事しかなかったことを雑誌のインタビューなどでしばしば語っている。
中村を変えた先輩俳優ムロツヨシからの言葉
2021年に『日曜日の初耳学』(MBS系)へ出演した際には、当時を「全部が敵だと思っていました」と振り返った。しかしそんな “暗黒期”に先輩俳優のムロツヨシから「じゃあ、お前何ができるんだ!」と一喝されたという。そこで何も言い返せず、「自分が赤ちゃんだと思うようにしました」「とにかくいろんなことを考えました。まず仕事をもらうには、どうしたらいいんだろうとか、そのためには普段からどう動けばいいのか」と考えるようになったようだ。
イケメン俳優枠ではあるが、しっかり苦労をしてきた中村。そこで培われた魅力に、一部の女性たちが「大人の色気」を感じ、「クズっぽさ」にときめき、「頭の良さ」に心酔し、そしてスキがありそうで実は全くなさそうな「底知れなさ」に妄想をふくらませているのではないだろうか。
推し活に慣れた現代の女性たちでさえ、“ガチ恋”させてしまう中村。既婚者というラベルさえ、新しい魅力に転換させていくことだろう。