政治家に2世信者が利用されると思ったけど…
それからテレビや新聞、雑誌から取材の依頼が入るようになり、じきに野党のヒアリングに呼ばれることも増えました。
最初に政治家の人から声をかけられたときは、「ちょっと怖いな……」と感じました。2世信者の味方をして支持率を上げたいだけなのではないか、と考えてしまう気持ちがあったからです。
けれど、一度話を聞きに行くと、その印象は変わりました。
「この問題にいままで取り組んでこなくて申し訳なかった。被害の大きさを知って何とかしたいと思っている。やはりこの件には法律が必要です」
そう率直にお話しになられたからです。
現行の法では悪質な献金そのものを規制する法律がなく、私たちも新しい法律が必要だと考えていました。
私が特に訴えたかったのは、「子どもには罪がない」ということと、「悪質な団体を規制する必要がある(被害者救済法や反セクト法など)」ということです。
親は騙されたり強引に勧誘されたのでなく、自分の責任と選択で宗教を信じ、献金をすることもあるでしょう。ですが、その子どもには何の選択肢もありませんでした。生まれた頃から「神の子」と勝手に言われ、世の中はサタンだと教えられ、人間の本能である恋愛も禁じられました。そして生活費や教育費を切り詰め、子どものことよりも教会に目を向けている親に育てられた2世たちの悲痛な叫びを聞きました。
いまこの日本で被害を受けている子どもたちは、声を上げることもできないでいるでしょう。親元にいるから、身元がばれるわけには絶対いかないからです。
夫に支えてもらいながら初めての会見に臨む
また、統一教会がこうした被害を認めないせいで、世間からの目も厳しくなっていて、それは何の罪もない信者の子どもたちへの差別にもつながりかねません。
子どもたちを救うことは私にとって最優先のことでした。
そんな子どもの被害を訴える場所として考えたのが、あの日本外国特派員協会での記者会見でした。
10月からの臨時国会で2世問題が議論されなければ、事件によって注目を浴びるようになったこの問題も、法律が作られることなく忘れ去られてしまうのではないか、という危機感がありました。
私は夫と一緒に会見に出ました。夫は仕事をしながら、会見の資料作成を手伝ってくれました。
私は法律の専門家ではありませんが、元2世信者として顔を出して話すことは自分にしかできません。夫に支えてもらいながら、私は初めての会見に臨みました。
そして会見が始まって45分ほどたった頃、あの両親の署名が入ったFAXを確認することになったのです。
「私が正しいと思ってくださるなら、どうかこの団体を解散させてください」という私の発言は、思わず口に出たものです。内心では私は激しく動揺していました。