「ムツゴロウさん」こと畑正憲さんが6日、87歳で亡くなった。北海道の自宅で倒れ、搬送先の病院で死去したという。
1980年に放送が始まった「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」は大人気番組となり、多くの動物番組の“元祖”となった。ムツゴロウさんが最後まで暮らした中標津のログハウスでのロングインタビューを再公開する(初出 2021年11月11日、年齢、肩書き等は当時のまま)。
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動物学者で小説家、エッセイストでもあるムツゴロウさん。86歳となった“ゆかいな動物たちの父”の人生には、常に勝負事があった。勝つ時があれば負ける時があるのも勝負事の常。ムツゴロウさんも人生で2度、巨大な借金を抱えている。北海道の自宅で奥様と暮らしながら、病と懸命に闘っていた。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
――ムツゴロウさんといえば動物のイメージが強いですが、作家、起業、ギャンブルと“勝負師”の印象も強くあります。ムツゴロウさんの金銭感覚や勝負事についての考え方をお聞きしたいのですが。
ムツゴロウ 作家は小さい頃からの夢でね。学生時代も「ご飯より本を食べる」と友達によく言われるくらい本が好きでした。サラリーマンだった1967年に出した「われら動物みな兄弟」が賞をもらって、それから色々書くようになりました。でも動物王国を作る時は餌代や広大な土地にフェンスなども作らなきゃいけないので、会社からの給料と本のお金では全然足りなくて銀行から相当な借金をしましたよ。
――ムツゴロウさんのエッセイには、借金生活もよく登場しますよね。
ムツゴロウ だってライオンに中指を食べられた時に真っ先に心配したのは、鉛筆が持てなくて原稿が書けなかったら借金を返せなくなるんじゃないか、ということでしたから(笑)。でもすぐに左手を添えて書く方法を練習して、締め切りは1回も破りませんでしたよ。
「何でも買っていいよ」
――「ゆかいな仲間たち」が全盛期だった80年代や90年代はテレビも景気が良い時代でしたが。
ムツゴロウ テレビ局にはずいぶん助けてもらって、おおいに感謝してます。値段は言えませんけどね(笑)。景気もよくて、一度フジテレビの日枝(久)さんに「何でも買っていいよ」と言われたことがあって、その時はエルメスの鞍を買ってもらいました。ただエルメスの鞍が想像よりもあまりに高くてフジテレビの予算を超えてしまって、残りは自分で出しました。その鞍は今でも宝物です。
――ムツゴロウさんにとって、お金ってどういうものなんですか?
ムツゴロウ あまり将来のお金の心配はしない方ですね。僕はきれいな湿原や森を見ると、つい買ってしまうんです。自然とは言いますがいい状態で保存するにはお金がかかる。でも放っておいたらその景色は無くなってしまう。それなら借金してでも自分で買って、なんとかその自然を守りたい。後からもちろん苦労はしますけど、でもそれは僕にとってはしょうがないことなんですよ。