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 さて坂本さんの追悼報道で最も活発だったのは東京新聞だった。訃報から2日目の一面トップも『坂本龍一さん死去 音楽で 言論で 問い続け』であり、「脱原発」「音楽」「外苑」の3つの項目を載せていた。

 原発に関しては今年3月15日にも一面で、

『坂本龍一さん、本紙にメッセージ 「原発 時間経つほど危険」 政府なぜ固執するのか』

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 と大々的に伝えていたというタイミングもあった。

 各紙の違いが面白いが、正直言うと原発についての記述に差があるのは予想できた。読売の中興の祖である正力松太郎は「原子力の平和利用」を訴えて「原発の父」とも呼ばれた人だ。一方で東京新聞は2013年12月に坂本さんと記者が討論をおこなったこともあるほど原発報道に力を入れている。坂本さんの訃報で各紙の違いがあらためて出た感じだ。

若き日の坂本龍一さん ©文藝春秋

注目したいキーワードは「外苑」

 その点、私が注目したいのは「外苑」というキーワードである。明治神宮外苑再開発のことだ。社会問題にも積極的に発言した坂本さんが最後に訴えたのは、明治神宮外苑再開発への反対の意思表示だった。東京新聞は3月18日に一面で坂本さんのインタビュー記事を掲載した。

『100年守った樹々犠牲にしないで 坂本龍一さん 外苑再開発見直し要望書』

 これは、坂本さんから「取材してほしい」との打診を受けて実現したものだという(東京新聞4月4日)。