ライブハウス「ロフト」の創設者で、“トークライブハウス”文化を生み出した平野悠さんは2021年、77歳で高級老人ホームに入居した。
平野さんが終の棲家に選んだ「パークウェルステイト鴨川」の入居金は6000万円。健康体で、仕事も継続中の平野さんがなぜ老人ホームに入る決意をしたのか。また、高級老人ホームでの暮らしはいかに……?
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――2021年の年末、77歳のときに高級老人ホーム「パークウェルステイト鴨川」に入居されたそうですね。きっかけはなんだったのでしょうか。
平野悠さん(以降、平野) 自分も80歳近くになって、会社(ライブハウスのロフト)ではコロナ禍の中クラスターを出すし、自分の夫婦関係もあまりうまく行っていなくて、周りの親友たちはどんどん亡くなってゆくし、そろそろ会社も勇退して最後の死場所を探す気になりました。まあ、海が見えるところで一人で死んでいきたいという思いがずっとあったんですよ。
何年か前に倉本聰の脚本で『やすらぎの郷』っていう老人ホームが舞台のテレビドラマがあったでしょう。
入居のきっかけは『やすらぎの郷』
――2017年にテレビ朝日系列で放送されて人気を博した昼の帯ドラマですよね。老人ホーム「やすらぎの郷」を舞台に、施設の入居者である一流文化人たちのドラマが石坂浩二、浅丘ルリ子らの出演で描かれました。
平野 そうそう。最後は東京でないどこか、海が一望できる田舎で終わりたいと思っていました。あの施設のように、医療がしっかりしていて、海が見えて、山があってインテリジェンスあふれる入居者とバーで一杯呑みながら余生を語る、みたいなことがしたいと思って決意したところはあります。
――老人ホームに入るきっかけになるほど、『やすらぎの郷』の世界観は魅力的だったんですね。
平野 ドラマの入居者は俳優だったり文学者だったりミュージシャンだったりしてね。僕はロックとかサブカルとかのライブハウスの運営をずっとやってきたから、そこには話が合いそうな人たちばっかりでさ。老人とはいえ、皆そこそこ仕事もしていて、そんな中で暮らしたいと。
でも、実際の老人ホームだとそうはいかないよね。多くがご夫婦で入居していて、重い疾患を持って入居している方も多い。杖をついたり車椅子で生活している人も多くて毎月2~3人は亡くなってゆく。みんな提携している亀田メディカルセンターが頼りなんだな。