妻に「別居」を切り出すと…
――平野さんは今、お連れ合いの方とは別居されているんですよね。
平野 そう。妻はこれまで一緒に住んでいた都内の実家に一人で暮しています。奥さんはとってもいい人なんですが……。
――ご夫婦でなく、平野さんお一人で高級老人ホームに入居したのはなぜなのでしょうか。
平野 はじめに話したように、自分の最終テーマは死ぬときはできたら誰も知らないところで一人で逝くことだと思っていたし、夫婦関係も長いことずっと良くなかったからね。浮気とか家出とか長旅とか、三行半を食らうくらいロクなことしてこなかったから当然なんだけども。そんな妻に認知症になったりして下の世話を頼むのも嫌だったのかな。
――では、平野さんから別居を提案されて。
平野 そう。鴨川の老人ホームで最期は一人で過ごしたいと切り出したら、「あなたはずっと海を見ながら一人死にたいって言っていたものね」と、快諾してもらえたんだ。
「離婚」を選択しなかった理由
――そこは「離婚」ではないんですね。
平野 だってもう78歳だもん、今さらしたってしょうがないよね。遺産の問題もめんどくさそうだし、僕は2回目の結婚だしさ。彼女が離婚したいと言うのであれば応じるつもりだったけど、そうはならなかったんです。でも「別居して1年」、たまに東京に戻ると今はとっても仲がいいんですよ。不思議だな。別居は正解だったかも。
――平野さんはブログの中で「意味のない結婚生活」と書かれていましたが、具体的にはどんな夫婦関係だったのでしょう。
平野 彼女はいい人ですよ。僕がいろいろ迷惑かけているだけでね。その罪滅ぼしではないけれど、カードを渡して彼女が生活に困らないようにしています。彼女を信頼しているし倹約家なのでお金の心配はしていません。ただ自分とは価値観が違いすぎて。
ケンカなんかすると半年もろくに喋らないとかね、そういう感じの生活でしたよ。
――半年も口をきかない生活……自分にはちょっと無理かもです……。
平野 だってケンカ状態なんだから仕方ないよ。それはね、「孤独の真髄」を知らないからですよ。孤独と孤立無縁は何かと考えていくと誰とも喋る必要ないんです(笑)。一人が寂しいと言っても1年もやり過ごせば馴れます。