平野 はじめて部屋からの眺めをみたときはぶっ飛びましたよ。僕の部屋は22階建ての18階にあるんだけど、太平洋が真下に見えて、外房線がそのすぐ横を走る。他にいくつも老人ホームを見たけど、こんなに心踊ることはなかったですよ。海や山、眼下に見える夕刻の鴨川の灯りがいいんです。ここなら死ねるって、もうお金の問題ではなくなってくるんです。
1年間暮らしてみた実感は?
――他の老人ホームはいかがでしたか?
平野 色々なホームとか4軒くらいみたんだけど、一人の空間が狭いところが多くて、気に入ったところはなかった。
――プライベートなスペースも充実していたほうがいいと。
平野 その点、僕の部屋は65平米の広さがあってキッチンもついている。自立型ホームだから誰からも邪魔されず、一人暮らしには申し分ありません。
――1年暮らしてみた実感として、今後、途中で転居することはなさそうですか。
平野 「景色がいいなんてすぐ飽きて東京に戻りたくなるよ」と言ってきたヤツもいるけど、今のところ僕は全然飽きてない。むしろ毎日、この景色に感動していますよ。海岸散歩も毎日夕日が拝める露天風呂も最高だしね。
亀田メディカルセンターと完全連携した介護棟もあるし雰囲気はリゾートの高級ホテル並みだし、図書室に露天風呂、ビリヤード、プール、ジム、カラオケ、カードやシアタールームなどなど、なんでもある設備は完璧だよね。スタッフの気配りもいいし。
でもどんな豪勢な施設であっても、やっぱりここは紛れもない老人ホームで、多くの人は自分の土地とかマンションを売り払って、ここを最終的な終の場所としてイメージしているんだと思う。
入居者は「人生の成功者」ばかり
――入居者はどんな経歴の方がいますか。
平野 医者とか弁護士とか経営者とか、やっぱり社会の成功者が多いから、外国で5万人の従業員を雇っていた社長とか、政府の諮問委員とか、大企業の役員だったり、そんな人たちの話を聞くのは面白いですよ。だけどさ、僕みたいな、ロックとサブカルの世界で生きてきた人間とはまったく畑が違うから話は合わない。『やすらぎの郷』のようにユーモア溢れる会話を楽しむ感じではないんだよね(笑)。
――お友だちはいないですか。