入居金は6000万円、90歳で全部償却
――お連れ合いの方も納得した上で入られた高級老人ホームの入居金は6000万円だったそうですが、入居者の皆さん、かなりのお金持ちですよね。
平野 しかも、入居金の6000万円は90歳まで生きていたらその時点で全部償却されちゃって、売り買いもできないんですよ。途中退去の場合はそれなりのお金が戻ってきますが。
――財産として遺すことができないんですね。
平野 そう。90歳過ぎても住めるんだけど、共益費、サービス料、食事代とか毎月20万近くかかる。で、さらに別途、光熱費とか外食費、旅行、酒代とか病院のお金もかかる。僕の場合、プラス10万以上使っているから、入居金の6000万とは別に毎月最低30万以上必要ってことになるわけです。だから、少なくとも死ぬまでに10年で1億円近くかかるし、それで「高級老人ホーム」と言われるんですね。
――食事といえば、ホームページに載っている写真がすごく豪華で美味しそうで、さすが高級老人ホームは違うと思いました。
平野 館内にあるレストランのシェフが3食作ってくれるんだけども、あまり評判は良くない。やっぱり健康第一だから減塩で薄味なんです。健康体の僕としてはちょっと物足りなくて、ほとんど自炊していますね。
高級老人ホームを去る人もいる
――なるほど。平野さんは今は引退前ではありますが、いつまでお金が持つか不安はないですか。
平野 まあ、周りの友人たちがどんどん亡くなってゆくのを見て、僕はあと5~6年くらいで死ぬつもりだからあまり心配はしていません(笑)。人生100年と言われるとちょっと辛いけど、でもこれから病気になったりして、この老人ホームと提携している病院に入るとなると、別途お金がかかるから、そうなるとちょっと大変かもしれないね。
――高額な入居金を納めたにもかかわらず途中で出ていく人はいるのでしょうか。
平野 海の見える露天風呂で一緒になった長老が、「1億3000万も払ったのに連れ合いが出ていってね。ハハハ」と話していました。「やっぱり都会がいい」というのが理由だったみたい。
――その一方で、平野さんはじめ皆さん、高い入居金を払っても住みたくなる魅力がこの高級老人ホームにあったということですよね。