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年間20万人の児童が行方不明に! 中国マフィアの「誘拐イノベーション」

旧正月に多発 超監視社会に対抗する“最新犯行手口”

2018/02/16
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(3)二段構えタイプ

 例えば公園で遊んでいる子どもに、愛想のいい男が近づいて「一人で遊ぶのは危ないから、おじさんが親のところへ連れて行ってあげよう」と声をかける。だが、そこそこ賢い子であれば外で知らない人に付いていかないよう言い聞かされているため、当然これを断る。もっとも実は「本番」はこれからである。

「あなた、なにやってるの? 警察に通報するわよ」

 そこに親切そうなおばさんがあらわれ、子どもを後ろに隠して守るのだ。やがておばさんは「この人は危ないから行きましょう」と言い、子どもの手を引いてその場を離れる――。

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 もうおわかりであろう、実は最初の男とおばさんはグルであり、二段構えで子どもを追い込んで誘拐する手口だったのだ。誘拐に対する子どもの警戒心を故意に利用するという高等テクニックである。

(4)カリオストロの城タイプ

 映画『ルパン三世 カリオストロの城』で、銭形警部に変装したルパンが本物の銭形を指して「そいつがルパンだ」とミスリードし、彼を追う衛兵隊長を騙すシーンがある。中国ではこういう行為を「賊喊捉賊(ぞくかんそくぞく)」と呼ぶのだが、これを児童誘拐に応用するパターンが存在する。

 例えば、子連れで外を歩いている母親から、誘拐マフィアの一員である中年女性が子どもをひったくり「何をやってるの! この人さらいめ!」と本物の母親を罵倒。やがて野次馬が集まってくると、マフィアの関係者数人が「このおばさんが子どもの祖母だ」と口々に言いはじめ、本物の母親を「人さらい」として取り押さえる。こうしてニセ祖母は本物の母親からまんまと子どもをさらってしまえるというわけである。

誘拐されて売り飛ばされ、24年後の2015年に両親と再会した男児 ©Imajinchaina/時事通信社

(5)友釣りタイプ

 鮎の友釣りよろしく、誘拐マフィア側が子どもを利用してターゲットの子どもをさらうという手法だ。以下、『文匯報』が報じた、中国のネット掲示板『天涯社区』の書き込みをそのまま翻訳しよう。

「昨日の午後、子どもを連れてマンションの中庭で遊んでいたんです。そうしたら、小さなかわいい女の子が来て息子と遊びはじめました。楽しそうに遊んでいたので、私はなにも気にしなかったんです。女の子の後ろには父親だという中年の男性がいました。私は彼とすこし会話したところ、マンションの第4号棟15階に住んでいるとのことでした。

 しばらくして、男性は車にトランスフォーマーのおもちゃがあるので取ってくると言ってその場を離れました。それから女の子は『いっしょに取りに行こう』と言ったのです。息子がいま遊んでいて楽しいから行きたくないと言うと、女の子は息子を引っ張って中庭から外に出て行こうとしました。息子はまだ小さいので、何度か引っ張られてついに泣き出してしまいました。

 女の子はそれを見て、ゆっくりその場を離れていきました。私はこのときは何とも思わなかったのですが、後で帰宅してから考えれば考えるほどヘンだと思いはじめたのです。そこで翌日、マンションのガードマンに尋ねてみたところ、例の父娘には見覚えがないとのことでした。私がマンションの第4号棟15階に行ってみると、同階に住んでいる4家族にはいずれも先日の父娘に該当する人がいなかったのです」

©iStock.com

 事実とすれば、ほとんどホラー映画に近い話であろう。通常の常識からすれば、そこそこ身なりのいい子連れの相手を誘拐犯として疑うことは不可能に近い。いざ狙われたら、被害を免れ得るかどうかは運次第と考えるしかない。