作画スタッフは総勢10名
――作画チーフとして作品全体をチェックされているわけですが、『鬼平犯科帳』の作画の流れについて、ご説明ください。
ふじわら さいとう・プロには作画スタッフが総勢10名います。それとは別に下書きを担当するひきの・しんじさんがいて、彼が鬼平の脚本を読み、鉛筆で下書きを描きます。それを私と、双子の兄である藤原輝美がチェックし、構図を鬼平流にアレンジします。構図が決まると、背景担当の白川修司さん、主要キャラ担当の木村周司さん、脇役キャラ担当の宇良尚子さんに原稿を渡します。白川さんと宇良さんが中心になり、作画をそれぞれ別のスタッフに割り振る、という流れです。
キャラが描かれ、背景がすべて入ったら、最後は仕上げ。スタッフ全員でトーンを貼ったり、ベタを塗ったり、修正を施したりします。下書きから原稿完成まで、だいたい7日くらいかかります。
私は鬼平のキャラクター作画を担当していますが、同時にゴルゴのネーム(構成)もやっていて、その作業を並行して行います。編集者にネームを見てもらい、OKが出ると下書きに入る。その後の流れは、鬼平の場合と一緒です。
鬼平が月に1本、ゴルゴが月に2本。それに加え、ゴルゴのスピンオフシリーズが3か月に1本入るというのが大まかなスケジュールです。
――さいとう・プロに入ることになったきっかけは?
ふじわら 私自身、漫画家として『拳児』や『ジーザス』を描いていました。ちょうど単発の仕事が終わり、「何か仕事ないですかね?」と知り合いの編集者に聞いたところ、さいとう・プロを紹介されたのがきっかけです。2019年の7月に入社し、最初はキャラクターの首から下だけを担当してました。そのうち背景も描かされて……現在に至るという感じです。
考えてみると、劇画の神様に導かれたのかもしれませんね。もともと池上遼一さんのアシスタントをしていたんです。池上先生はさいとう先生の影響を受けていますから、アングルや間の取り方が似ていて、自然と同じように描けるようになっていました。さいとう先生も「ふじわら君がウチに来たのも、運命なのかな」とおっしゃってました。
劇画はペンの勢いが命
――ふじわらさんは漫画家としても活躍されていたわけですが、ご自分のタッチとさいとう劇画のタッチの違いは、どう調整されているんですか?
ふじわら 70年代に劇画ブームがあって、子供の頃にどっぷり浸っているわけです。理髪店に行けば、ゴルゴが全巻そろっていた時代です。その時の記憶を呼び起こして描いています。劇画はペンの勢いが命です。ペンタッチがないと、劇画にならない。さいとう先生も、「キャラの特徴を出せ、劇画はメリハリや」とよくおっしゃってました。
――最後に、さいとう劇画の魅力について、お聞かせください。
ふじわら 手塚治虫キャラやディズニー・キャラがあるように、さいとう・たかをキャラというのが歴然とあるわけです。勧善懲悪が確立された、人間味あふれる劇画キャラ。私もさいとう・プロのスタッフになって、「これを真似しよう」と思いました。そんなさいとうキャラの魅力を、後世に伝えていきたいですね。
ふじわら・よしひで 1966年、鳥取県生まれ。藤原芳秀の本名で漫画家として活躍。代表作に『拳児』『ジーザス』『コンデ・コマ』などがある。2019年よりさいとう・プロに作画スタッフとして参加。
【マンガ】「鬼平犯科帳」第1話から読む