どれを選べばいいかわからない
置いてある商品も種類が豊富だ。聞いたことのないような名前の製品もたくさんある。洗顔料、保湿クリーム、導入液(何を導入したいのか)、ビタミンしみ予防液、美白セラム(セラムって何だ)、フェイスシート、オールインワンジェル(意味がわからないが、これひとつで済むと謳っている)。日本製だけではなく、ヨーロッパや韓国の製品もある。違いは何だろうか?
また値段の根拠もよくわからない。800円の化粧水と、5000円の化粧水を比較しながら、この差をどう理解すればいいのか困惑する。さすがに5000円は出せないが、もし800円の化粧水に気休め程度の効果しかないとしたら、買う意味がないような気がする。いったい何がどうなると、同じ化粧水の価格が6倍以上にはね上がるのか。安価な製品を買っても、損するだけではないか。高すぎるのも困るが、安すぎるのも逆に疑わしい。価格の差が何を意味しているのかがまったく読み取れない。
ここまでいろいろな製品がいっぺんに並んでいると、ここから何かをひとつ選ぶなどというのは無理だとしか思えなかった。それぞれにどんな効果があるのか。どう使い分けるのか。全部つけたら効果が倍増するのか。こんなにたくさんの製品をいっぺんに顔につけたら、肌の上で混ざってしまって意味がなくなるのではないか? スキンケア製品を買う人は、どれを買えばいいのかどのように判断しているのか。あらゆる疑問が一気に噴出して、どれかひとつを選ぶどころの話ではなくなってしまう。
棚の前に立っているだけで疑問は止まらなかった。「薬用」という名前の商品が多いのはなぜか。これらは薬なのか? ヒアルロン酸、ナイアシンアミド、レチノールなどの名前がやたらに強調されているのも不可解だ。たぶんなかに入ってる成分の名称なのだろうが、購入する人はこれらの説明を理解して買っているのか。
そういえば、洗剤で「酵素パワーのトップ」という広告があるが、私はいまだに酵素がどんなパワーを持つのか知らないままだ。コマーシャルであれほど元気に歌っているのだから、きっとすごい威力なんだろう。と、やや勢いまかせに説得されている状態だ。スキンケア製品の宣伝も似たようなものなのだろうか。
どれがいい製品なのか、自分に合った効能があるのか、まるで判断がつかない。ここは無理せず、一度帰って調べよう。何の知識もないままでは混乱するばかりだ。まさか何も買えずにドラッグストアを後にするとは思わなかった。