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上司からの「セクハラから逃れるには退職が確実」と…

〈嫌な思いをしてまで働く必要はないし、他にも会社はたくさんある〉(B子さんの訴状より)

 B子さんが悲痛な胸の内をこう語る。

「なぜセクハラを受けた側が退職しないといけないのでしょうか。ほかにも『社内でセクハラを訴えたところで何も変わらない』『セクハラから逃れるには退職が確実だ』といったことを言われました。その言葉がショックで……。頭が真っ白になり、その時は『人事に相談します』と答えるのがやっとでした。

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 でもその数日後、Z氏の上司から『人事には相談しないでほしい』と頼まれたんです。理由を聞いたところ、人事を通すとコンプライアンス委員会を開くなどの面倒な手続きが発生し、対応が遅くなってしまうからとのことでした。

 ですがこの頃、Z氏の上司も、A子さんのセクハラの件で、忘年会の参加者として事情を聴かれていたんです。今思えば、彼自身がこれ以上関わりたくないと考えたのかもしれません」

B子さん ©文藝春秋

 B子さんはZ氏の上司が部内だけでセクハラ事案を処理しようとしたことに不満を感じ、社外の相談窓口に通報した。現在は外部機関による調査が進んでいる。

 その後、B子さんは適応障害と診断され退社。今でも当時を思い出して自宅で嘔吐してしまうことがあるという。

 B子さんは退職勧告を受けたと主張し、会社都合での退職と上司のハラスメントの慰謝料の支払いを求めてクラシアンとZ氏に内容証明を送付した。クラシアンの回答書によると、B子さんに対するハラスメントは認められなかったため、自己都合での退職とし、慰謝料の支払いは認められないとのことだった。

 そして、Z氏の代理人からの回答書には、こんな文言があった。

〈B子様がZ氏との雑談のなかで、ご自身の身体について自信がある旨のお話をなさった際に、Z氏がB子様の胸が大きい旨の発言をしたことがございます〉

内容証明送付後のY氏回答書

 B子さんはこの回答に納得がいかないという。

「あたかも私が自分の身体や胸に自信があると自慢していたような言いぶりですが、そんなことをした覚えはありません。確かにZ氏のセクハラ発言を受けて、『昔からよく言われる』というようなことを言って笑ってごまかしたことはあります。

 ですが、そうやってうまく受け流す以外に、どうやって上司のセクハラに対応しろというのでしょうか。その場で毅然とした態度をとれなかった私の弱さもありますが、被害に遭う人みんなが常に強くいられるわけではない。それをこんな形で揚げ足を取ってくるなんて……」

B子さんは最後にこう話した。

「クラシアンは上場を目指して動いていました。上場審査にあたり、内部監査やガバナンス体制の構築が重要になってきます。そんな会社の役員や上層部がハラスメントを行っているなんて論外です。

 それにクラシアンは、お客様の自宅に行って水回りのトラブルを解決する会社です。お客様には主婦の方や一人暮らしの女性も多いんです。女性社員が安心して働けない会社に誰が仕事を依頼したいでしょうか」