クラシアンのホームページには次のような記載がある。
〈株式会社クラシアンの企業理念は「くらし安心♪クラシアン~」の社名のもと「くらしに安心を提供する」ということです〉
クラシアン側「当社従業員による不適切な言動や行為により…」
A子さんとB子さんの証言について、クラシアンに事実確認を行ったところ、文書で以下のような回答があった。
「このたびは、当社の元従業員、A子様とB子様(※回答文書では本名)には、当社従業員による不適切な言動や行為により、多大なるご心痛およびご迷惑をおかけいたしましたこと、衷心より深くお詫び申し上げます。
本件に関し当社といたしましては、社内規定に則り、コンプライアンス委員会および懲罰委員会において、不適切な言動や行為を行った当該従業員については、既に厳正な指導ならびに処分を行っております。また、このような問題が二度と起こらないよう、役職員を含む従業員へのコンプライアンス教育をさらに徹底するなど、再発防止に努めてまいる所存です。
また、これまで当社は元従業員のお二方には、和解協議などを通じて真摯に対応してまいりましたが、誠に残念ながらお二方から提訴されるに至っております。
頂戴した各種ご質問につきましては、今後の裁判にも関わることでもございますので、当社としては具体的な回答は差し控えさせていただかざるを得ませんこと、何卒、ご理解を賜れれば幸いです」
文書中にある「不適切な言動や行為を行った当該従業員については、既に厳正な指導ならびに処分を行っております」という箇所について、改めてA子さんとB子さんに確認した。
「在職中にハラスメントは認められず、処分もなかった」
A子さんは「私が在職している際には、上司から『セクハラの事実は認められなかった。そのため処分もない』といった話を伝えられました」と答え、B子さんは「コンプライアンス委員会に申し立てしていないので、どういう経緯でどのような処分になったのかわかりません」とのことだった。
A子さんやB子さんが退職し、提訴にまで踏み切ったことで、クラシアンが何らかの処分を下したということだろうか。その部分について再度質問を送ったところ、こう回答した。
「今後の裁判にも関わることでもございますので、当社としては具体的な回答は差し控えさせていただかざるを得ませんこと、何卒、ご理解を賜れれば幸いです」
労働問題や職場でのセクハラ対策に詳しい新村響子弁護士は次のように話す。
「民事訴訟ではセクハラを訴える被害者側に立証責任があります。セクハラ行為自体が密室で行われたり、とっさに録音することが困難だったりする場合も多く、客観的な証拠を集めるのが難しいというハードルがあります。ですが、病院や第三者に相談した記録や、日記やSNSでの被害に関する発言なども証拠になりえます」
男女雇用機会均等法第11条は、職場におけるセクハラによって労働者の就業環境が害されることのないよう、企業は必要な措置を講じなければならないことが定められている。厚生労働省は企業がこの措置義務を有効に実施するために作成した指針の中で、セクハラに関する労働者からの相談に応じて適切に対応するための体制整備などの指針を具体的に定めている。
「会社側の配慮義務については、ハラスメントの相談窓口の有無というような形式的な措置ではなく、セクハラの発生後、適切に対応するために必要な体制を整備していたかなど、実質的な運用状況が問われるでしょう」(新村弁護士)
社員が安心して働ける環境整備が求められている。