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ギラギラした欲望渦巻く“東急歌舞伎町タワー”で繰り出されるタブーなき“名作アート”〈歓楽街の新名所を訪ねて〉

2023/04/24

genre : ニュース, 社会

 スクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきた歌舞伎町の、また日本の都市の歴史を可視化した作品といえようか。常に清濁併せ飲んでタブーなき表現に挑み、土地や時代の真相をえぐり出してきたアーティストコレクティブChim↑Pom from Smappa!Groupの本領発揮といえる作品だ。

 タワー隣に広がるシネシティ広場と、西武新宿駅をつなぐ通路に面した場所に設置されているのは、篠原有司男《オーロラの夢》。

篠原有司男《オーロラの夢》 撮影:木奥惠三

 華やかな色合いの絵画は一見、琳派風に咲き誇る花々でも描いたのかと思わせる。だが実のところこの作品、穏やかでない方法で制作されている。アーティスト自身が、スポンジを巻きつけたボクシンググローブを装着。その両拳を絵の具に浸し、おもむろに壁にかけたキャンバスの表面を片端から殴りつけていく。花弁のように見えるのは、絵の具まみれのパンチが繰り出された跡だったのだ。そう知って眺め直すと、この美しさは激しい葛藤や闘争の果てに生まれたものだったかと感じ入る。

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日本現代アートの粋が集まる

 地下階に広がるライブホールのバーラウンジは、緻密な描写の壁画で覆われている。淺井裕介による絵画作品《大地のこだま》だ。

淺井裕介《大地のこだま》 撮影:木奥惠三

 暗めの照明のなかに浮かび上がる画面は、ごく自然な優しい色合いを持つ。それもそのはず、この絵は絵具ではなく土で描かれている。このタワーの建設現場の地下や、花園神社など新宿の各地などで採取した土であるという。生命の循環をテーマとした有機的な絵柄が、横幅15メートルにわたって展開されるさまは圧巻だ。