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地上17階のバー空間にも、巨大なオブジェが浮かび上がっている。西野達の作品《新宿》である。
新宿区役所で使われていたスチール棚、ホストクラブの赤いソファ、かつて道に立っていた街灯などが、つなぎ止められひとつの巨大なオブジェを成す。それが宙空に吊るされ、圧倒的な存在感を発している。
西野達は、大胆な野外プロジェクトで世界的に知られるアーティスト。屋内に恒久設置された西野作品は日本でここにしかないので、この光景は希少である。
高層階にあるホテル客室内も、さまざまなアートで彩られている。ペントハウスの一室には、細倉真弓が歌舞伎町で撮り下ろした写真作品が掛かる。風景の細部に目を向けており、被写体が何なのかはっきりとはわからないが、街の艶っぽい雰囲気がよく伝わってくる。
ペントハウスの別の室には、野村佐紀子の写真作品もある。歌舞伎役者の十代目松本幸四郎が楽屋で化粧する姿を撮ったもので、役者のハレとケが交わる一瞬を捉えた写真は、陰影が濃い歌舞伎町という土地とよく呼応している。
他にも各所で、森山大道や荒木経惟の写真、青木野枝に大巻伸嗣の立体など、当代一流の作品と出逢える。歌舞伎町に生まれた一大エンターテインメント・タワーは、内部をブラブラ歩くだけでアート探訪が楽しめて、お得感たっぷりだ。