僕は長いことオリックス・バファローズを応援している。プロ野球も大好きだ。もっと言えば人間そのものがたまらなく好きだ。ということは人間の営みの蓄積である「歴史」も大好きだし、海外旅行に行くと現地で生活している人々の営みを見ているだけで何時間でも楽しめる。見知らぬ街のスーパーマーケットなどはたまらない個人的観光スポットだ。そこで日常的な買い物をしている人々を何時間も飽きることなく眺めているのが最高の癒しだ。
同時に僕は50年近い人生の大部分で「リーダー」という仕事をしてきた。振り返れば小学5年生の時に地域子供会の会長を押し付けられた時からずっとだ。人間が好きなので「人間の営みを表現する物語」に惹かれて漫画編集者になり、リーダーという職種に慣れているせいで少年漫画誌編集長を13年間もやった。それでも飽き足らず、さらに人間の営みの魅力を追求したくて今では漫画原作者になってしまった。そんな僕の極めて個人的なプロ野球の楽しみ方を少しご紹介してみます。
ダッグアウトから分かる、マリーンズの怖さ
僕は試合中や試合終了後のダッグアウトの様子を観察するのが大好きだ。基本的には全試合録画するので、選手やコーチや監督の気になる仕草や表情、会話の様子などを見つけるとその映像を執拗に何度も繰り返し観て楽しんでしまう。
試合そのものよりダッグアウトの様子を見ている方がそのチームの状態の良し悪しがわかるような気がするのだ。監督の所作ひとつとっても、油断なく試合展開とベンチの様子に目を配りコーチたちと絶えず言葉を交わし味わい深く感情豊かな表情を見せてくれる中嶋聡監督のようなタイプもいるし、試合中あまりコーチとも言葉を交わさずベンチの様子に興味を示さず座り込んだままほぼ動かない監督もいる。ダッグアウトの様子から垣間見える人間劇場は試合そのものと同じくらい僕にとって興味深いエンターテインメントだ。
その興味は別にオリックスだけに向くわけではない。他球団であっても全然構わない。今年、僕がとても興味深いのは千葉ロッテマリーンズの吉井理人監督だ。吉井監督からは中嶋監督と同じ「名将のオーラ」を強く感じる。ベンチ内での思慮深い立ち居振る舞いもそうだし、その結果として今年のマリーンズはとても厄介だ。打線が昨年までとは別のチームであるかのように粘り強い。試合ごとに首脳陣の明確な方針を感じる。野手では松川虎生の二軍育成、佐藤都志也・田村龍弘の捕手起用、平沢大河・藤原恭大・友杉篤輝の抜擢&躍動、大下誠一郎の獲得などなど打つ手の全てが選手のモチベーションに繋がっているように見える。今年からしばらくはとても手強いライバルになりそうだ。