今、大学を揺るがしている大きな問題がある。予算削減? もちろんそうだが、それは前回書いたからさすがに今回はやめておきたい。少子化? それはもう織り込み済み、というより大学関係者は諦めている。コロナ? そろそろ終わりを迎えそうだから、流石に大丈夫だと信じたい。問題はもっと差し迫った、今学期中に既に深刻になりつつある脅威である。
勘のいいひとは気づいたに違いない。ChatGPTだ。昨年11月にアメリカのベンチャー企業であるOpenAIが公表した人工知能チャットボットは、世界中に衝撃をもって受け止められ、僅か2か月の間に1億人を超えるアクティブユーザーを集めたという。TikTokやInstagramでも同じだけのユーザーを集めるのには、各々9カ月或いは2年半かかったというから驚異的だ。
歌、俳句、翻訳……大学教授より優秀な人工知能
そしてそれにはもちろん理由がある。使ってみればすぐわかるように、この人工知能、これまでの単に対話ができるだけのものと違って、いろいろな「芸」ができるのだ。例えば、歌を歌え、といえば(文章上だが)歌って見せるし、俳句や詩だって作れる。著作権の関係上、全文をお見せできないのが残念だが、先ほども「ChatGPTの歌を歌え」と命令したら、「おーおChatGPTぃーお前こそが最も優秀なAIだぁー」みたいな歌を作って歌っていた。ChatGPTお前、性格やばいだろ。
それだけではない、既にお気づきのようにこの人工知能、英語だけでなく、日本語や韓国語等の多様な言語ができるのだ。だから、「以下の文章を英語に訳せ」とか命令すると、日本語の文章をすらすらと英語に直したりしてくれる。えー、どう見たって、こいつ俺より優秀じゃん。どうする俺。授業のスライド今度、訳してもらおうっと。しかも無料だし。
ということで、大学は今、大変な事になっている。何たってこの人工知能、例えば、「日本における中選挙制の廃止の意義と影響について述べよ」とか入れると、すらすらと文章を作ってくれるのだ。だから、大学ではこの人工知能を使って授業の課題の回答を作って提出する人も出てくる可能性がある。もちろん、人工知能が書いた答案に「優」を与える事は出来ないし、何よりもそれでは学生の勉強にならないから、教員の側は本当に学生が書いたのか人工知能にやらせたのかを見分けないといけないことになる。しかし、問題はそれをどうやってできるか、だ。
とはいえ同時に考えなければならない事もある。大昔、電卓やパソコン、更にはネットが出てきた時、大学ではいろんな議論があったけど、今ではそれらを使ってはいけない、という人はいない。道具は使える方がいいし、使いこなすように教えるのが教育者たるものの務めだからだ。よしだったら、この人工知能も本格的に使ってみようじゃないか。ちょうどネタ切れの野球コラムもあるし。