全国最多の指定暴力団が事務所を置く福岡県。とりわけ、全国唯一の特定危険指定暴力団「工藤会」のお膝元として知られ、過去には一般市民が銃殺されたり、飲食店に手榴弾が投げ込まれたりする事件が発生し、“修羅の国”と揶揄されるほど危険なイメージが長年つきまとっていた。

 福岡県警は2014年、工藤会トップを逮捕する「頂上作戦」に着手。2020年には工藤会の本部事務所が解体されたほか、翌年8月にはトップの野村悟被告に死刑判決が言い渡されるなど、工藤会の弱体化は着実に進んでいる。

警察が「準暴力団」と位置づけ警戒を強めてきた「半グレ」

 その一方で近年勢力を増しているのが「半グレ」だ。半グレは一般市民でもなく暴力団組員でもない「半分グレている」「グレー」な存在だが、暴力団対策法の規制を逃れながら特殊詐欺などの犯罪をしており、得られた資金の一部は暴力団に流れているとみられる。

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 だが、警察も半グレを野放しにしているわけではない。半グレを「準暴力団」と位置づけて、警戒を強めてきた。

「以前は盤石だった工藤会ですが、頂上作戦などによる衰退に伴い、最近は水面下で半グレによる資金獲得活動を広げています。その一環として、あえて若い者を組員にしないこともあります。また、一度は組員だった者が、暴対法の規制を逃れられる半グレとして再び犯罪行為を始めるといったことも起きています」(福岡県の暴力団に詳しい事情通)

 暴力団員が半グレに“再就職”する時代の幕開けに、福岡県警は今年1月から全国で初めて半グレの捜査を専門に行う「準暴力団等集中取締本部」を組成し、取り締まりの強化に乗り出していた。

写真はイメージ Ⓒ文藝春秋

 そんなさなか、捜査員らを驚かせる”ある事件”が起きた。

 それは、福岡一の歓楽街・中洲でガールズバーを無許可で営業したとして、半グレグループの一員である元暴力団員の男ら3人が逮捕された事件のこと。

 だが、無許可営業でのグレーな飲食店の摘発は全国的にも珍しくない。捜査員らが驚いたのはガールズバーの“場所”にあったのだ。