目が乾く、ゴロゴロする、つねに眩しい……。
ドライアイに悩む人は増加傾向にあり、潜在患者も含めると国内だけで2000万人に達するという統計もある。花粉症でも症状は悪化するが、今年は黄砂の影響でスギ花粉の飛散期が終ってもドライアイの症状が改善しない人が多いという。
目が乾くからドライアイ――。じつにわかりやすい病名だが、そもそもドライアイって病気なのだろうか。
本格的に研究が始まったのは1990年代以降。“ドライアイ”は30年でどこまで分かったのか?
「いまは確立された診断基準があり、“疾患(病気)”として分類されています」
と語るのは、東邦大学医療センター大森病院眼科教授の堀裕一医師。しかし昔は曖昧な位置づけだったという。
「1990年代に本格的に研究が始まり、治療法が進化するにつれて“ドライアイは病気”という認識が国民にも医療側にもできていきました。しかし以前は眼科でもあまり重視されていなかったことも事実です。目が乾いた状態が続いて炎症を引き起こして初めて“乾性角結膜炎”という疾患名が与えられ、ようやく治療対象になる――という時代もありました」
そもそも、なんでドライアイは起こるの?
ドライアイになる原因は様々だ。
涙には、まぶたの縁にある「マイボーム腺」という器官から分泌される「マイバム」と呼ばれる脂分が含まれており、これが目の表面を覆うことで潤いが持続するのだが、何らかの原因でマイボーム腺が塞がる、あるいは正常に機能しなくなると、涙の分泌量が減ってドライアイが起きていく。
以前は、加齢により涙の分泌量が減る高齢者に多い病気、とされていたが、近年はパソコンやスマートホンの普及で、若年層でもドライアイに苦しむ人は増えている。これらの電子機器を使って作業に集中していると、無意識のうちに瞬きの回数が減るので、目の乾燥が進んでいくのだ。
「人間が瞬きをするのは目の表面の温度が変わるから。温度が下がって一定の温度になると、無意識のうちに瞬きをしようとする反応が起きる仕組みなのですが、何かに熱中したり集中しているとその反射機構が正常に働かなくなるのです」(堀医師、以下同)