送り拍子木(江東橋付近)
ついたり消えたりする提灯の次は、鳴らし手のいない拍子木だ。錦糸町の駅南口にあたる江東橋付近に伝わる「送り拍子木」の内容は次の通りである。
「夜回りの男が拍子木を打ちながら街を巡回していると、後ろから同じように拍子木を打つ音が聞こえる。振り返っても誰もいないが、暗闇からカチカチと音だけが聞こえてくる」(『本所七不思議探索地図』より)
ただ拍子木の音が聞こえるだけでなく、音が後ろからついてくるというのが、恐怖を煽るポイントである。令和の今では拍子木の音を聞く機会も少ないので、暗闇の中にカチカチと音が響いたら余計に恐ろしくなってしまいそうだ。
ちなみに『パラノマサイト』で「送り拍子木」の能力を手にするキャラクターは、闇を抱えたマダムこと志岐間春恵。
ゲーム内には彼女が住んでいる屋敷が登場するが、これは江東橋付近ではなく、平井駅から徒歩8分の「立花大正民家園 旧小山家住宅」がモデルとなっている。
錦糸町駅からは2駅で着く。『パラノマサイト』ロケ地めぐりをするなら、少し足を伸ばしてここにも訪れておきたい。見学は庭園・住宅内ともに無料。
足洗い屋敷(亀沢4丁目付近)
北斎通りが通る亀沢4丁目付近につたわる「足洗い屋敷」は、なかなか異様な話だ。
「三笠町(現在の亀沢)の旗本屋敷で、夜毎に天井を突き破り血まみれの巨大な男の足がさがってくるという怪事が発生。腰元たちがたらいの水で足を洗うと引っ込むが、毎晩のことにほとほと困り、屋敷を変えたところぴたりと終息したという」(『本所七不思議探索地図』より)
残念ながら、この話に登場する旗本屋敷はもう存在しない。どこに建っていたのかもはっきりと明らかにはなっていないが、北斎通りを歩きながら巨大な足の正体を想像するのもまた一興である。