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津軽の太鼓(緑町公園付近)

 本所七不思議には「音」系の怪異が多い。すみだ北斎美術館の目の前にある緑町公園付近で起こったという「津軽の太鼓」もその1つである。

ゲーム内に登場する緑町公園 ©2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.  
実際の緑町公園 ©文藝春秋

「大名津軽家の上屋敷では火事を知らせるときに太鼓を打ったが、幕府の定めでは火事の際大名屋敷では板木を鳴らすことになっていた。なぜ津軽家だけが太鼓なのか。特別な理由や幕府の許しがあったのか、詳細は不明で不思議がられた」(『本所七不思議探索地図』より)

 津軽家屋敷の敷地は、現在の緑町公園付近の広大な一帯を占めていたという。

 この話は「怪異」というより、都市伝説寄りの内容に思える。ついつい「板木でも太鼓でもいいだろ……」と野暮なことを思ってしまうが、大名屋敷の謎について思い思いに推測する町民の姿が目に浮かぶようである。

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落ち葉なき椎(旧安田庭園付近)

 常陸国笠間藩主の本庄因幡守宗資により、元禄年間(1688~1703)に築造されたと伝えられ、後に安田善次郎氏の所有となり、氏の没後大正11年(1922年)東京市に寄附された旧安田庭園。両国駅から徒歩7分の場所にある。

ゲーム内に登場する旧安田庭園 ©2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
実際の旧安田庭園 ©文藝春秋
ゲーム内に登場する旧安田庭園 ©2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
実際の旧安田庭園 ©文藝春秋

 現代的な街並みの中に、突如として景観豊かな庭が現れ、喧騒を忘れてゆっくりできる観光スポットだが、この付近にも本所七不思議の言い伝えがある。それは「落ち葉なき椎」だ。

「大川端(編注:隅田川の下流、特に吾妻橋から河口付近までの右岸一帯のこと)に門を構える平戸新田藩松浦家の上屋敷には、立派な椎の木があった。まわりの道を覆うほど枝葉の茂った巨木だったが、なぜか葉を落とすことがなかった」(『本所七不思議探索地図』より)